「これ1台ですべて済む!」メガーヌR.S.は、家族持ちのクルマ好きにとっての味方!? ルノー メガーヌR.S.試乗記

あっさりと曲がれる、秘密のテクノロジーとは?

ルノー「メガーヌ ルノー・スポール」で峠道をドライブしていると、ちょっとキツネにつままれたような気になることがある。ステアリングホイールを握っているドライバーが、そうとう頑張ったつもりでタイトコーナーに挑んでも、メガーヌのホッテストバージョンは、あっさり、サラリとカーブをこなしていく。

たとえばフロントに機械式LSDを組み込んだスポーツモデルの場合だと、カーブでアクセルペダルを踏み込むとグイグイと引っ張られるかのように曲がっていく。けれども、やはり本格スポーツハッチであるメガーヌR.S.は、そんなアグレッシブなそぶりを見せることなく、涼しい顔で”曲がり”を終える。

279馬力(参考値)の1.8Lターボを積んだFFハッチは、「R.S.デフ」こと電子制御式のトルク配分システムを採用している。これは、フロント左右輪の回転差をつねに監視し、グリップを失った(失いかけた)タイヤに瞬間的にブレーキをかけることで、トラクションを取り戻すデバイスだ。ある意味簡易的な差動制限装置だけれど、効果的だ。

「R.S.デフ」に加え、ルノー・スポール版メガーヌの魔法のようなコーナリング性能を実現させているのは4輪を操舵する、つまりリヤタイヤも向きを変える「4コントロール」システムである。メガーヌGTに搭載されたそれをR.S.用にセッティングし直したもので、約60km/hを境に、低速域ではステアリングを切った方向とは逆に、速度が上がると同位相に後輪をステアさせる。最大2.7度までリヤタイヤを動かすことで、クイックな小まわり性と、ハイスピードコーナリングでの安定性を両立させた。

●チェッカーフラッグを模したフォグランプは、ルノースポールのアイコンだ
●ディフューザーにセンター出しのエキゾースト。ただ者ではない雰囲気が満点だ

おもしろいのは同システムの柔軟性で、走行モードが「レース」の場合は、位相を切り替えるしきい値を約100km/hまで引き上げて、サーキットインフィールドでのコーナリング速度のさらなる向上を図る。一方、日常の場面では、クルマの挙動が大きく乱れるといった緊急時に、ステアリングの回転速度に合わせてリヤタイヤの舵角を増やすことで、クルマの安定性を取り戻す方向に作用する。

4輪のブレーキを個々にコントロールして”とっちらかった”自車を落ち着かせる「ESC」。その技術を応用して、R.S.デフのように積極的に走行性能をアップする技術が生まれたのと対照的に、クルマの運動性を向上させるために開発された4輪操舵システムが、今度は安全分野で活用されるわけだ。クルマのテクノロジーって、オモシロイですね。

 

まるで現代に蘇ったパルサーN1!?

鬼のようなコーナリング性能を誇るメガーヌ ルノー・スポールには、さらに秘密がある。

ひとつは、フロントサスペンションに大幅に手を入れた「DASS」ことダブル アクシス ストラット サスペンション。ベースとなるマクファーソンストラット式サスペンションはシンプルな構造で、生産性と性能のバランスがいい。しかし、ハードなスポーツモデルで使うとなると、アライメントの変化が大きく、外からの力に弱いという面がある。

そこで専用のアクスルを追加して、マルチリンク式のように挙動の変化を抑制し、剛性をアップしたのがDASSだ。新型では、初代メガーヌR.S.以来のそれに磨きをかけて、また、19インチホイールに対応してアクスルの強化も果たしている。

スポーティなアルミホイールに巻かれるサンゴータイヤは、ルノー・スポールと共同開発したとうたわれる、ブリヂストンのポテンザS001。強力なグリップ力で同車の運動性能のベースを支える。サイズは、245/35R19である。

もうひとつ。ラリーフィールドでの走りに一家権を持つルノーらしく、バンピーな路面で威力を発揮するのが、「4輪HCC」と呼ばれるダンパーだ。これはショックアブソーバー底部にセカンダリーダンパーを仕組んだもので、路面からの強い入力があったとき、最後の最後でコレが踏ん張ってくれる。具体的には、メインダンパーが縮みきりそうになると、セカンダリーダンパーが減衰力を発生させ、いわゆる「底突き」を抑えてくれる。結果的に、少々荒れた路面でも、スムーズにタイヤを接地させ続けてくれるのだ。

”ちょっと古い”日産党(死語?)なら、4輪操舵システムの「HICAS(ハイキャス)」や、仕組みとアプローチは違うけれど、スポーツ性と乗り心地の好バランスを狙った「リップルコントロールショックアブソーバー」を思い出すかもしれない。私は思い出しました。

●ノーマルのメガーヌとなんら変わらないリヤの居住性が、大きなセールスポイント

「もしや日産からの技術提供があったのでは?」とルノージャポンのスタッフにうかがうと、「ありません」とつれない。「いずれもルノー独自の開発です」とのこと。

「でも、両社の技術的なシナジー効果といったものがあるのでは……」となおも質問すると、「こういう風に考えてください」とスタッフ氏。「ルノーと日産、共同の棚があって、それぞれの技術がいろいろ載っている。両社の技術者は、そこから必要な技術をピックアップして、ニューモデルの開発に役立てる、と」。

なるほど。そういう具合ですか。世が世なら(!?)、21世紀の日産「パルサーN1」が、メガーヌR.S.のようであったたかもしれないと考えると、なんだか複雑な気分です。

 

A110とは、顧客層が違う?

メガーヌ ルノー・スポールの概要をまとめておきましょう。エンジンは、最高出力279馬力、最大トルク390Nmを発生する1798cc直4ターボ。同じエンジンブロックを使ったミッドシップスポーツ「アルピーヌA110」が、252馬力と320Nmだから、メガーヌR.S.の強心臓ぶりうかがわれよう。

トランスミッションは、「6EDC」ことツインクラッチ式の6速DCT。いまのところ日本に導入されるのはこの2ペダルモデルだけだが、本国では3ペダル式のMTも用意されるので、時期を見て、限定的にMT車が導入されるかもしれない。0→100km/h加速のカタログ値は、5秒8。ストッピングパワーも強力で、フロントにブレンボの4ピストンキャリパー、リヤにはTWR製モノピストンキャリパーが装備される。コンフォート、レースなど、5種類の走行モードを持ち、ローンチコントロールも備える。

●今のところはDCTのみ。MT派は登場を願いましょう

シートは、ヘッドレスト一体型のバケットタイプ。アルカンターラを用いたぜいたくなもので、「R.S.」のロゴが刺しゅうされる。ホールド性抜群。インテリア各部のレッドステッチもステキ。

価格は440万円と、ホンダ「シビック タイプR」の450万360円より、安価に設定されています!

なお、(予想されたこととはいえ)新しい「アルピーヌA110」とは「顧客層がまるで違う」と、先のスタッフ氏は言う。アルピーヌA110のオーナーは、プロフェッショナルな自営業が大半で、「クルマを何台も持っている人」が購入する例が多い。

一方、メガーヌR.S.は、いわゆるサラリーマンが頑張って買って、「これ1台ですべてを済ませる」ことになるようだ。実際、スーパーな動力性能とはうらはらに、メガーヌR.S.の乗車定員は5人のままだし、荷室も十分広い。ノーマルメガーヌゆずりの実用性を兼ね備えていることも、隠れた人気の秘密かもしれない。

分割可倒式になったリヤシートを畳んだり、シャッター付きのカップホルダーを見せたりして、「な、これなら家族で使えるだろ」と伴侶を説得しているフランス人エンスージアストの姿が頭に浮かんで、家族持ちのクルマ好きの苦労は、洋の東西を問わず同じだなァと、なんだかおかしくなった次第。

 

文と写真:ダン・アオキ


■メガーヌR.S.(FF・6速DCT) 主要諸元(欧州参考値) 【寸法㎜・重量㎏】 全長×全幅×全高:4410×1875×1435 ホイールベース:2670 車両重量:1480 乗車定員:5人 【エンジン・性能】型式:M5P 種類:直4DOHCターボ 総排気量:1798cc ボア×ストローク:79.7mm×90.1mm 最高出力:205kW(279ps)/6000rpm 最大トルク:390Nm(39.8kgm)/2400rpm 使用燃料・タンク容量:プレミアム・47L JC08モード燃費:13.3km/L  最小回転半径:5.2m  【諸装置】サスペンション:前ストラット/後トーションビーム ブレーキ:前Vディスク/後ディスク タイヤ:前後245/35R19 【価格】440万円


詳しくはコチラへ↓
ルノージャポン オフィシャルサイト