マツダ3の卵が30年前にあった!?ファミリア・アスティナ playback the magazine 1989

●ファミリア・アスティナ1600DOHC(5速MT)。発売当時価格157万1000円。

世界に誇れる上質なサスペンション特性、ボディ剛性

4ドア&ハッチバックのクーペ型モデルといえば、トヨタ・コロナSFと同系統のスタイリングだが、ファミリア・アスティナはもっとコンパクトだ。ふくらみのあるフェンダーと前後の絞り込みが効いて、キュッと引き締まったスポーティな印象が強い。ホイールベースは2500㎜と、ファミリア4ドアセダンと同一だ。ホイールベースを長くとることによって、前後のオーバーハングを短くする。これがファミリア・アスティナのスタイリング上のポイントだという。
全長は4ドアセダンより10㎜長く、全高はじつに40㎜も低い。グンとワイド感を出しているが、全高が低い割には室内のヘッドクリアランスは十分で、事実上セダンと同じ居住性を備えている。後席のヘッドクリアランスもクーペにしては十分だ。

さて、ボンネットの低いアスティナのフロントサスストロークは、セダンより10㎜短い。単に短くしただけでは操縦性に難点をもたらすので、ファミリア・アスティナのフロントサスはキャンバーコントロールを行う工夫がされた。
十字型の特殊なゴムブッシュをストラット頂点の支持部に組み込み、ステアリングを切った状態でネガティブキャンバーを適度にキープするというもの。そのネガティブ・アングルはわずか15分にすぎないが、これで操縦特性は4ドアセダンに似たものになるのだという。
さらにフロントのダンパーはガス式で、ストロークが不足した分を補う。いずれもノーズが低く、サスストロークが短くなったことによる弱点をカバーするための改良である。

●ファミリア・4ドアセダンGT(5速MT)。発売当時価格146万3000円。見比べてみると、ファミリア・アスティナのボンネットの低さがよく分かります。

リヤにハッチバックを背負った分だけ重量は後部にかかるはずだが、前後重量配分はセダンと同じだという。1600DOHCエンジンでファミリア・セダンGTよりより10㎏重いが、この程度は問題ではないようだ。130馬力/7000回転、14.5㎏m/5500回転のB6型DOHCエンジンは相変わらずよく回る。6500回転のレッドゾーンを軽々とオーバーする。だが、もうひとつトルク感に欠けるのが惜しい。

●トップグレードの1600DOHCは4ドアセダンGT系と共通のB6型直4 1597ccエンジン。130馬力/7000回転、14.0㎏m/5500回転のスペックです。なお1600ccエンジンは後にラインアップから外れ、1991年から1800ccDOHCエンジン搭載モデルへと切り替わります。

既にファミリアで体験したとおり、大衆車レベルとしては極めてボディ剛性が高く、またどっしり重厚感のあるサスフィーリングは新型ファミリア系に共通した“美点”だ。185/60R14のポテンザ88のタイヤ特性もさることながら、ファミリア・アスティナのドリフトはおだやかだ。ほぼニュートラルに近い弱アンダーなのだが、フロントが逃げて手に負えなくなるということがない。
テールの流れをアクセルワークでコントロールしつつ、ゆっくりとした動作でカウンターステアを当てれば、きれいにコーナーを抜けて行く。サス性能に余裕があるのだ。操縦性に荒っぽさがない。ステディなサス特性である。
ステアリングの重さとそのサス特性もよくマッチしている。繰り返しになるが、エンジンのトルク感があれば、このクルマは世界のトップレベルにランクされるはずである。内容の濃いスポーティクーペだ。

●当時の試乗記に「このクルマは世界のトップレベルにランクされるはず」というコメントもありますが、実際に海外……特に欧州では高く評価され、熱心なファンも少なくないそうです(欧州圏での車名はMAZDA 323F)。

─1989年ドライバー6月5日号・遠藤春雄氏のレポートより─

[ファミリア・アスティナ1600DOHC(5速MT)主要諸元]
■寸法・重量
全長:4260㎜
全幅:1675㎜
全高:1335㎜
ホイールベース:2500㎜
車両重量:1020㎏
燃料タンク容量:50ℓ

■変速比
1速:3.416 2速:1.842 3速:1.290 4速:0.972 5速:0.820
最終減速比:4.388

■サスペンション・ブレーキ・タイヤ
サスペンション:ストラット(前後)
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(前)/ディスク(後)
タイヤ:185/60R14

(まとめ●オールドタイマー編集部・上野)