【潮風吹きすさぶ過酷な離島のカーライフ】(2/3)旧車の敵、サビからミゼットを守り抜く!

●田辺さんの愛車、1970年式ダイハツ・ミゼットMP5。
●前1輪、後ろ2輪の軽三輪トラック。排気量は305cc。

防錆剤を塗りまくれ!

クルマの減価償却期間は約10年といわれる。さらに、現代のクルマは10年程度では壊れない。そんななか、潮風の影響で新車が4~5年で朽ちるという大島。
そうした過酷な環境からクルマを守るべく、島内にある自動車修理工場の何軒かが推奨するのが、「タフコート」という北欧生まれの防錆剤の塗布だ。見た目は黒色の高粘度タール状で、これを下回りに塗りまくるのはもちろん、ボディパネルの継ぎ目、排水穴、エアインテークとアウトレット、とにかくあらゆる開口部から流し込む。あるいは内装をはがして、まんべんなく塗り込む。
路面凍結剤(塩化カルシウム)の散布が頻繁な北海道ではよく知られた存在らしく、大島ではここ最近、新車にこの防錆施工をすることで延命しているクルマが増えているという。

「ミゼットには購入後、すぐに塗りました。もうジムニーみたいにはしません」と田辺さん。

●ミゼット購入後、「タフコート」を取り扱う工場で、下まわりはもちろん、フレームまでビッシリと施工した。性質はタールに近く、施工後2年以上経っても硬化はせず、適度な粘度が維持される。
●フロントの下まわり。ショックアブソーバーにまで塗布している点に注目! 外気に触れる部分をできるだけ覆うことで、サビの発生を防ぐのだ。
●こちらはボンネットのステアリングリンケージ点検口。こういったこみ入った場所や……
●写真のドアの戸袋、あるいはキャビンと荷台のすき間など、手を入れることが難しい場所にも施工。そのような狭い場所に流し込む場合は原液では粘度が高すぎるため灯油で希釈。灯油は揮発し、最終的に「タフコート」だけが残るという。

“三丁目の夕日”でハッとして、「昭和の町」からやってきた

この1970年式ダイハツ・ミゼットMP5を購入したのは取材時から2年ほど前のこと。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』に出てきた姿を見て、遠い日の思い出がよみがえったという(なお、劇中で使われたのはMP3)。

「子どもの頃にあれが転んでいるのを見たことがあるなぁと思い出したんです」

多分に漏れずハチロクはチューニングを重ね、三原山のワインディングで走りを楽しんでいた田辺さんだが、非力で簡素で、時に転んでしまうこともある小さな軽三輪に心を引かれていった。
いろいろと世知辛い世の中だから、あんな愛らしいクルマでのんびり走り、後続車にどんどん抜いてもらうというのもいいかもしれない──そう感じたのが購入の動機だ。
また父との記憶にも繋がっていったという。

「父はダイハツの技術屋で、勤務していた山下町(横浜市中区)のディーラー整備工場に幼い私をよく連れて行ってくれました。そこにミゼットが入庫していたかは覚えていないんですが、道で転んでいるのを見かけたのはその頃です」

ダイハツを代表する名車ミゼットに、今は現役を引退した父を乗せてあげたい──ミゼット購入にはそんな思いも後押しした。

ネットオークションを探していると、掘り出し物の1台が目にとまった。大分県豊後高田市が、市内に現存する古き街並みを観光エリアとした「昭和の町」で、かつて観光客用に民間レンタカーとして使われていた車両だった。
「大切に乗ってほしい」という売り主の言葉を守ると約束して商談は成立。購入原資はジムニーとともに愛したハチロクの売却によって捻出した。

伊豆大島にはカーフェリーの航路がない。クルマはすべて貨物船から陸揚げされる。桟橋に下ろされたミゼットの実車は、思い出にあるものよりはるかに小さく、まるでオモチャを見ているようだった。
これは放っておけば、すぐに朽ち果ててしまう……田辺さんはすぐにミゼットを工場に持ち込み、「タフコート」による防錆施工を依頼したのである。

●キャビン内部。若干の破れはあるが、状態の良いシート。極上品のスペアのシートも確保している。
●エンジンは空冷2サイクル単気筒のZD型305cc。
●物を載せる荷台にはさすがにタフコートは塗れない。幸い状態はひどくなかったので、田辺さんはサンダーで塗装と点在するサビをはがし……
●建築用の防錆塗料を刷毛塗りした。
●これだけやっても、ジワリジワリと侵攻するサビ。特に荷台に顕著だ。いずれは本格的な補修が必要になるかもしれない。
●保管はもちろんガレージで。それでも湿気が多いため、マメに空気を入れ換えている。
●「このクルマは私と同い年なんです」と語る田辺康男さん。なるほど、購入動機がもうひとつありましたか。

(文と写真●オールドタイマー編集部)

─この記事はオールドタイマー127号(2012年12月号)より抜粋・編集を行ったものです─

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