ターゲットはママさん!? 不思議な素敵さを持つ「DS7クロスバック」に乗ってみた

「DS」ブランドを知っていますか?

「DS7クロスバック」でガスステーションに入ったら、セルフスタンドなのにスタッフの男性が近寄って来て、「コレ、ナンてクルマですか?」と声をかけてきた。「見たことないバッヂですね」とフロントを見たり、リヤにまわったりと、興味津々。

「DS7クロスバックです。あ、DSというのはシトロエンの上級ブランドで、つまりトヨタに対するレクサスみたいなもので……」とコミュ障気味の運転者(←ワタシです)が説明すると、「へえ、そうなんですか!」と若い男性は驚いて、やはりDS7を観察しに来た同僚に、「オイ、レクサスが作ってるらしいぞ」と、うーむ、明らかに誤解してる。
「いやレクサスではなくて、むしろプジョー『3008』の姉妹車というか、従姉妹というか……」と訂正を試みたが、果たしてわかってもらえたか……。

なにはともあれ、クルマ離れが叫ばれる21世紀の日本でも、やはりガススタにはクルマ好きの若者が集まるようでひと安心……じゃなくて、ことほどさように、わが国におけるDSブランドの浸透度は低い。まあ、ブランドがシトロエンから独立してまだ5年も経っていないので、東洋の島国でのこの反応も致し方ないかもしれない。

 

DS7クロスバックは、昨2017年のジュネーブショーでデビューしたSUV。プジョー3008より55mm長い2730mmのホイールベースに、わずかに大きな全長4590mm、全幅1895mm、全高1635mmのボディを載せる。レクサスでいうと、「NX」あたりと大きさのうえではいい勝負。

エンジンは、1.6Lターボ(225馬力、300Nm)と2Lディーゼルターボ(177馬力、400Nm)の2種類。日本には、右ハンドルの8速AT仕様が輸入され、駆動方式はFF(前輪駆動)のみとなる。

価格は、ディーゼルを積むベーシックな「So Chic」が469万円。20インチを履いてレザー内装がおごられた上級版「Grand Chic」には、ガソリンモデル(542万円)と、ディーゼルバージョン(561万円)が用意される。

 

華やかな内外装。キラキラ系SUV

DS7クロスバックの第一印象は、キラキラ女子ならぬキラキラSUV。エンジンをかけると、LEDヘッドライトがクリクリと動きながら輝き、デザイン面でも、テールランプほか、インテリアのスイッチ類やダイヤル、ダッシュボードのフェイシアや内張などに、宝石のカットを思わせる菱形のモチーフが繰り返し使われ、なかなか華やか。

●So Chicのインパネ

上級グレードのGrand Chicには、豪華なブラックレザーのRIVOLI(リヴォリ)内装がおごられ、センターコンソール中央上部には、エンジンスタートとともに上下方向に回転して現れる、B.R.Mアナログ時計が仕組まれる。

●Grand ChicにはB.R.Mアナログ時計がおごられる

今回試乗している、標準グレードのSo Chicは、ファブリックのBASTILLE(バスティーユ)仕様となる。乗員を驚かせるカラクリ仕掛けの時計は装備されないが、ブロンズ色でまとめられたインテリアは、たしかに「So Chic!」。粗めに織られたシート地も、ザックリとした感触が心地いい。20インチを履く上級版に対し、こちらの足まわりは18インチ。タイヤサイズも「235/55R18」と穏やかなもので、乗り心地は……、まぁ、普通。

いや、別にディスっているわけではない。それどころか、DSに搭載された先進テクノロジーは「ずいぶんこなれている」と感心した。具体的には、全車に標準装備される「DSアクティブスキャンサスペンション」について。フロントウインドーのカメラで路面の凹凸を読み取り、瞬時にショックアブソーバーの硬軟に反映させるシステムなのだが、よくも悪くも、その作動をドライバーに意識させることがない。

これがひと昔(ふた昔!?)前のシトロエン車ともなると、信号で止まるたびに車体が沈んだり、リヤがむくりと起き上がったり、カーブでは微妙に柔らかくロールにあらがったり、細かいハーシュは伝えるくせに、大きなうねりはキレイにならして軟体動物のような走りを見せたりと(おもに「エグザンティア」での印象を語っています)、ハンドルを握りながら脳内にメモすることが多くて忙しかったのだが、DS7クロスバックでのドライブは、心穏やか。よくも悪くも、心に刺さることがない。これが技術の進歩というものなのでしょう。テクノロジーが自然なフィールのなかに溶け込んでいる。

 

見た目と違って、とっても実用的

2LのBlueHDiディーゼルは、AdBlue(尿素水溶液)を噴出してNOx(窒素酸化物)を除去、各種触媒と微粒子フィルターで、排ガスをクリーン化させるシステムを持つ。エンジンを始動させると、車外ではディーゼル特有の音を意識させるが、ひとたびクルマに乗ってしまえば気にならない。2000回転で400Nmという大トルクを発生。黙々と働く実用ユニットだ。

●AdBlueの補充口と、給油口が並ぶ

初見ではキラキラ要素に目を奪われたDS7クロスバックだが、日常使いを模してみると、当たり前だが、実用的。あえて細かい身近な例を挙げると、大容量のドアポケットが便利。必要なら、複数のペットボトルを挿すことも可能だ。本来、飲み物を置くべきフロアコンソールのカップホルダーは、むしろ身のまわりの小物や財布、携帯電話などを入れることが多いので、汎用性の高い大きなドアポケットはありがたい。

●室内収納系は実用的

また、前席間に設けられた、観音開きの蓋付きボックスも無愛想に大きくて、何でも放り込める。これまた便利。特にエアコンの風を導入する機構はないのだが、冷気がたまるのか中の缶ジュース類がよく冷えて、暑い日にはうれしい。いやぁ、フランス車を試乗して、カップホルダーと収納ボックスのハナシをする日が来ようとは思いもしませんでした。

●リヤの荷室だって必要十分な容量を確保

さて、ごく普通のSUVとなった(←褒めてます)DS7クロスバックだが、日本国内ではどうやって売っていくのか? プレス試乗会の会場でスタッフが、秘策を話してくれた。

「女子会が狙いです。それと、お子様の送り迎え」
「?」
「お母様方が乗って来るクルマには、メルセデスやBMWが多い。そんななか、ドコのクルマかわからないけれど、『なんかシャレてるね』と感じていただければ」
「DS7クロスバックが、ですね」
「そうです。押しつけがましさがなく、品よくエレガントだ、と。そこから少しずつDSブランドが広がってもらえれば」

●シフトノブまわりだってこんなにオシャレ。ママさんウケ間違いなし?

遠大な計画ですね、とは口に出さなかった。DS7クロスバック自体、それほど大きな数を期待できるモデルではないし、そもそもDSブランドの知名度をいきなり上げる妙手もないから、「ちょっと謎めいてるけどステキ」と思わせるのは、ある意味、潜在的な顧客に対する現実的なアプローチかもしれない。ぜひとも頑張っていただきたい。DS7クロスバック、ママ友はわからないけれど、ガススタのお兄さんたちを引き寄せるパワーは確認されている。

 

(文と写真:ダン・アオキ)