〈主査インタビュー〉ロードスター生誕30周年記念車に込めた思い、そして次世代モデルの話

 

●中山氏も立ち会ったという、30周年記念車の公式写真。場所は、生産される宇品工場の屋上

 

広島から生み出された名車の誇り

中山 ちなみにこの写真は、広島の宇品の工場の屋上で撮影しました。ボディカラーがマル秘のモデルなので、撮影する時間とかが難しかった。基本的に夜明け、朝の5時ぐらいからスタンバイして、夜明けのタイミングでバシャバシャと撮影して。予算的なものも正直あるのですが、それよりも、広島で生まれたばっかりのところを撮影して、世界中に写真として出すほうがいいのかなと。あえて広島で撮影しました。

今回の限定車の生産は3000台をマックスにしているので、シリアルナンバーをふります。30周年なので、3000台というの数字にはこだわりました。というのも、3000台ぐらい作らないと、世界中に行き渡らないんです。500台ぐらいだと、正直お渡しできないところが増えてくる。とはいえ、3000台でも少ないです、量産車としては。それこそ収益出すという意味では、レイズさんとかにはすごく頑張ってもらいました。彼らにすれば、3000台しかないわけですから。そのために部品を作るというのは難しいのですが、そこはみんなでがんばって。レカロさんもそうです。ステッチとかパイピングのオレンジがボディカラーと合っているので、外からみるとすごくかっこいい。

●30周年記念車のインパネ。シートはもちろん、シフトノブやパーキングブレーキまわりにもオレンジステッチが入る

 

●こちらも公式画像。後ろの煙は、火力発電によるもの

 

―― こういう色、ロードスターに似合うんですね。

中山 じつは何色でも似合うんですよ、と思っています。大概の色は、実車に塗って検証してるんです。青い色とか緑色とかも塗っていて、基本的に似合うんです。ND型はわりとシンプルなデザインなので、色開発のときに塗って駄目かもしれないという心配はありませんでした。通常、外板色はいわゆる板に塗ってみて確認するのですが、さて実車に塗ったときに「おや?」と思うことはたまにあります。でも今回に関しては似合わないということはないとみんなわかってましたから。これは、この写真は、宇品の工場は石炭で火力発電してるんですけど、そこの煙をバックに撮影したものです。

―― さらに詳細を教えてください……。え、ホイールに刻印入ってるの!?

●フロントホイール&ブレーキ。ホイールには、「30th Anniversary」と刻印が入る

中山 入ってるんです。「30th Anniversary」と。ホイールに刻印するというのは、レイズさんぐらいしかない技術らしいです。グローバルカップカーは、「GLOBAL MX-5 CUP」と「Made in Japan」というのが掘ってあります。今回の刻印も、ちょうどそこに。そうやって特別感を作るのと同時に、ブレンボのキャリパーには、ブレンボさんが持っていたすごく似たオレンジがあったので、それをそのまま使わせてもらいました。後ろはニッシンさんのブレーキなので、ニッシンさんにはこのブレンボさんの色に合わせて新しく作ってもらって。ちゃんと、NISSINという文字も入れてもらいました。

―― どこにですか?

●リヤのブレーキキャリパーは通常モデル同様にニッシン製。キャリパーはオレンジ塗装が施され、「NISSIN」とロゴが入る

 

中山 ブレーキの、キャリパーに。最初、字を入れましょうよといったときには、「そんな、いいですよ……」という感じだったのですが、われわれは入れてほしくって。なぜなら「Brembo」って文字はあるのに、「NISSIN」と入っていないのは不自然だなと思って。ニッシンのブレーキは、バイクのレースではすごい有名だから。尊敬しているので、ぜひ入れてくださいとお願いしました。この限定車は、いろんなメーカーさんに協力をいただいてできているんだよということを表現したくて。それをいろんな人にわかってほしくて。

 

―― このND型が出たときに、ボディカラーとして、昔で言うザ・スポーツカー的なビビットな色ってなかったじゃないですか。それでいいのかなって思っていたのですが、こういう形で出すんだなというのが腑に落ちたというか。ストーリー性もちゃんとあるし。

中山 オレンジを発想したのは、じつは最近なんです、正直に言えば。過去の限定車は、すでにマツダが持っていた色を塗ったものでしたが、今回に関しては新たに作った。この先の話はわからないですけど、このクルマに塗って終わりかもしれません。ロードスターだけになるかもしれない。そのぐらい難しい色を専用に作ったというのは初めてですね。

―― マツダの今は、塊というか束で訴求していますけど、この限定車が唯一外れた色になるわけじゃないですか。

中山 それは、前田(育男 常務執行役員 デザイン・ブランドスタイル担当)とかともいろいろ議論しました。スポーツカーだから、当然ソリッドカラー、ビビッドな色が似合うのはわかっている。一方で、ブランドの統一感を重視しようというのはあって、そのなかでこのオレンジがどういう位置づけになるのか。でもロードスターというのは、マツダブランドの真髄みたいなもので、ロードスターである以上は、絶対にブランドからは外れない。

―― どのぐらいの時期にこのオレンジを発想したんですか?

中山 30周年は、このND型で迎えることは当然わかっていたので、現行車が出た当時から議論はありました。25周年でソウルレッドを売ってしまっているので、ちょこちょこっとした色じゃインパクトはないなとは思っていました。候補として上がったのは黄色とか、青とか。でも、今のストーリーに合うのはオレンジかなということで。黄色は、技術的に難しいというのはあるんですが、それ以上に、台数が期待できないんです。多くの人が、声を大にして「黄色がほしい」と言われるんですが、記念車というのはより多くの人にお渡ししたい。

―― 要望と、実際の台数って一致しませんよね。黄色って、最初にイメージカラーとして出したりしますけど、人知れず消えていく。

中山 FD(RX-7)のときにもRX-8のときにも1年か2年ぐらいで黄色が消えていて。あんまり出ない色というのがわかっていますから。

―― グローバルでそうなんですか?

中山 そうですね。ちょっと女の人受けしないなっていうのも感覚としてあって。男としては、フェラーリとかも黄色があったりして受けはいいんですが、女の人って黄色はじつは食いつきが悪い。オレンジになった瞬間に「かわいい!」って言ってもらえます。

―― ホイールの話をもう少し詳しく。ホイールは、臓物(ブレンボ)がでかいから、ホイール自体を薄肉化したということ?

中山 そうです。とはいっても、現行の16インチは6.5Jなんですが、限定車のものは7Jにしてあります。17インチはもともとも7Jなので、両方ともに7Jということになります。タイヤの幅も変更せず195のまま。ホイールのインセットも変えていないので、ちょっと外側に出る感じ。いい感じのツライチになっています。

―― 何も付加物付けなくても、日本の車検は大丈夫そうですか?

中山 大丈夫です。BBSで17インチ×7Jのホイールがありましたから、レイズさんも自信があったと思います。でも、16インチというのは未知数。単純に作るだけなら簡単らしいですが、完成車メーカーが要求する剛性とか強度って非常に厳しい。特に強度。割れたらアウトです。剛性は、われわれがロードノイズを妥協すればいいのですが、強度に関しては相当に厳しい。「なかなか難しい」と言われながらも、やっていただきましたね。

―― ホイールの幅が広がるだけで、ちょっと走り面も変わりそうな気がします。

中山 よくなっていると聞いています。ウチの操縦安定性開発のメンバーが言うには。タイヤの横の剛性が上がったような感じになるので、よりクイックになっているそうです。それと、当然ながら軽いです。もともと17インチのノーマルよりもBBSの鍛造のほうが軽いのですが、それ以上に、16インチはサイズ違いで軽い。そもそも小さいですから。加えて鍛造ですから、ND史上、一番軽いホイール。その軽さによって、慣性が小さいから最初の転がり、ひと転がりが違う。ジャイロ効果が小さいので、軽快に回ると。

―― このホイールは、高値取引ですね笑 どのぐらいの重さなんですか?

中山 まだお伝えできないのですが……適切な時期に、お答えします。

 

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