[GRスープラ国内初試乗]トヨタの”ニュル”「Toyota Technical Center Shimoyama」で試す!

悩ましき選択肢? 3グレードを乗り比べ

舞台はトヨタ自動車本社からクルマで約30分ほど、ちょうど豊田市と岡崎市にまたがる山間部に建設が進められている新たな研究開発施設「Toyota Technical Center Shimoyama」のうち、先に工事が終了して運用が開始されたカントリー路。ニュルブルクリンクと同様の入力を再現できるようにと整備された、自然の地形を生かした複雑なコーナーが連続し、高低差75メートルにも及ぶ全長約5.3kmのタフなコースだ。

ここが新型GRスープラの国内初試乗の舞台。現地にはRZ、SZ-R、SZの3グレードがそろえられており、これらを乗り換えて順に比較することができた。

●4月から運用を開始した「カントリー路」。全長は5,385km。ジャンピングスポットなどもあり、クルマには相当負荷がかかる過酷なコースであった
●新しいテストコースで、3つのグレードを比較した

エントリーグレード「SZ」の実力は?

まずステアリングを握ったのはSZ。最高出力197馬力の2リッターターボエンジンを積み、足元には17インチのランフラットタイヤを履く仕様である。

●この程度の”ジャンプ”でも、体感的にはかなり浮いている。約5.3kmのコースに、アップダウンや低速・中速・高速コーナーなどさまざまなクルマにとっての”課題”が詰め込まれている。写真はSZグレード、価格は490万円

そのエンジンはトルクがフラットで、しかも8速ATがきめ細かく変速してトルクバンドをキープしてくれるので、案外もの足りなさはない。それよりも、ノーズが軽くステアリングを切ったとおり、こちらの思いを先取りするかの如く曲がっていくのが痛快な印象だ。

一方、まさにニュルブルクリンクかと錯覚する、路面がざらつき細かな起伏が続くこのコースでは、車体がかなりあおられ、接地感が安定しない。VSCオンでも瞬間的なカウンターステアが必要になる場面はしょっちゅう。SZだけタイヤがランフラットで、アダプティブバリアブルサスペンションと呼ばれる電子制御ダンパーが備わらないのが、その要因だろう。

さすが6気筒!と思いきや?

続いては乗ったRZは、直列6気筒3リッターターボエンジンを積み、最高出力は340馬力に達する。タイヤは19インチで、アダプティブバリアブルサスペンション、アクティブディファレンシャルが標準装備となる。

●「スープラは6気筒」を体現するRZ。価格は690万円

まさにタイヤが転がりだした瞬間、その走りの格段の上質感が伝わってきた。タイヤは路面にひたひたと追従し、操舵感もクリア。「いいねぇ」と口をついて出てしまう。

そしてアクセルペダルを踏み込めば、直列6気筒の心地よいサウンドが奏でられるのだから堪らない。最大トルクは500Nmにも達し、しかもエンジン特性はフラットだから、まさに蹴飛ばされるようにクルマが前に出る。

車重はSZより110kg重いものの、フットワークは依然シャープで、操舵とともにノーズが切れ込むだけでなく、すかさずリアが追従してクルマ全体が旋回モードに入っていく。一方、絶対スピードが上がっているだけにシビアな部分も頻繁に顔を出すようになるから気を抜けない。特にリヤの出方は、もう少し溜めを利かせるというか、移行を穏やかにしたいところだ。しなやかに沈み込んでじわりと出てくるという具合に……。

スープラ”ベストグレード探し”は意外な展開に……

そして、一番興味があったSZ-Rへ。こちらの2リッターターボエンジンは最高出力258馬力。シャシーにはRZと同様の装備がおごられ、18インチタイヤが組み合わされる。

●中間に位置するSZ-Rは、最高出力を258馬力に高めた2リットルターボエンジンを搭載。タイヤは18インチ。価格は590万円だ

動き出しで感じる質の高さはRZと共通。その上でSZ-Rは、パーキングスピードですら鼻先の動きが軽く、すでにクルマとの一体感みたいなものが芽生え始めるのを感じる。

期待どおり、コースに入ってもSZ-Rの走りは爽快だった。操舵に対する初期応答がきわめて鋭敏なだけでなく、その後の挙動の繋がりも一層リニアで、深い舵角までしっかりとクルマが追従してくる。前後重量バランスがいいおかげで、いわゆるアンダー/オーバーステア的な動きが小さく安心感が高いし、ジャンプするように伸び上がって、そこから一気にフルボトムになるような場面でも、動きが安定している。

エンジンも十分パンチがあるし、伸び感も悪くない。長い直線のあとのトップスピードがRZにそれほどそん色なかったのは、優れたハンドリングのおかげで思い切りアクセルを踏めるからという面も大きいに違いない。

各車の印象は、ざっとこんな感じである。一方、共通しているのは、やはりそれなりに手強いハンドリングだということである。起伏で吹っ飛ばされて挙動が乱れたり、勾配の変化で接地性が大きく変化したりで、このコースでは終始クルマと格闘しているような感覚だった。もちろん、それを手懐けるのも歓びではあるが、心してかかったほうがいだろう。

こうしたちょっとピーキーな部分は開発ドライバーも認識しているが、それより今回はシャープさ、ダイレクトさを優先したのだという。やりたいことが明確なクルマ。それはそれでアリだろう。そしてお察しのとおり、個人的には現状ではSZ-Rが気に入ったという次第である。

あのマークX GRMNが今後のGRを示唆する?

すべての走行が終わったあと、同じGRのバッジがつくマークX GRMN、そう限定600台が発表された東京オートサロンの会期中に完売してしまった“幻の”1台にも乗ることができた。こちらも同様に、以前袖ヶ浦フォレストレースウェイでも味見はしていたが、このコースでも懐深い走りの実力がいかんなく発揮され、とても楽しめた。

●大排気量NAに6速MTという、今となっては稀有な組み合わせ。すでに買えないのが残念すぎる1台「マークX GRMN」

絶滅寸前のV型6気筒3.5リットル自然吸気エンジンと6速MTの組み合わせにもソソられるが、その真価はやはりフットワークにある。4輪の接地感がつねに濃密で、ゆえに限界がわかりやすく、それを超えるときの挙動も穏やかなので、思い切って攻められるのだ。

スポーツドライビング初心者も、いやベテランに至るまでコントロールの歓びを味わえる走りに、これがもう手に入らないのが本当に惜しく思われた。とはいえ、GRの走りは今後、この方向で行くようだから、楽しみもまた大きいと言っておこう。

〈文=島下泰久〉

※編集部より
近日中に走行インプレッション動画をアップ予定。お楽しみに!