【試乗動画あり】乗って・試してわかった!「マツダ3の長所・短所」

ついにマツダ3のステアリングを握ることができた。ただし、舞台はクローズドのテストコース。すでに販売店には試乗車が用意されているタイミングだけに「なぜ?」とも思ったが、しかしマツダはその分、クルマの実力を細かいところまでじっくり感じ取ることができる舞台を用意していた。

●舞台は、GKNドライブラインジャパン プルービンググラウンド(栃木県)。モータージャーナリスト島下泰久氏が徹底試乗!

何しろ通常の商品説明のほかに「人間中心のクルマ造り」、「シート」、「操安性&制動性」、「NVH」といった項目について、試乗時間以上に時間を割いての解説が行われ、試乗も高速周回路、ハンドリング路など異なるパターンを設定。車両もファストバックの1.8リットルSKYACTIV-Dと、セダンの2.0リットルSKYACTIV-Gの2車種が用意され、その真価を十分体感できるものになっていた。結果的には、いきなり一般道に出るよりもマツダ3について理解を深めることができた。そう思っている。

フットワークのよさに「!!」

前置きはこれぐらいにして、早速そこで得られた印象をお伝えしよう。新型マツダ3、特筆すべきは何と言っても、そのフットワークである。

●スポーツ、改めハッチバックでもなく「ファストバック」と呼ばれる5HB。1.8ディーゼルとの組み合わせでの試乗だった

まずはファストバックの1.8リットルSKYACTIV-D搭載車に乗り、30km/h未満の低速での走行から試乗をスタートすると、マツダがあえてそう設定した狙いのとおり、この時点でクルマの動きの質の高さがありありと伝わってきた。やや重めのステアリングは操舵に対して正確に応答し、そのフィードバックをしっかりと伝えてくる。サスペンションは動き出しから滑らかにストロークし、従来のSKYACTIVシャシーの悪癖だったひょこひょことした細かな突き上げが解消されている。サイドウインドーの厚みを増やすなど、さまざまな対策も効果を発揮しているのだろう。下まわりから入ってくるノイズ、風切り音も小さい。これはいいかも…期待が、グンと高まる。

速度を上げても、その期待が裏切られることはない。中立位置での据わりがピシッと出たステアリング、前後方向の姿勢変化がよくチェックされたサスペンションのおかげで、とても安心感が高いのだ。サスペンションはあえてストロークを大きくは取っていないというが、その短いストロークのなかで足はよく動いているし、それが心地よいフラット感も演出できている。

いや、それだけでは説明が足りない気がする。もう少し噛み砕くならば、走りの時間軸とでも言うべきものが、じつによく制御されていると感じられるのだ。例えば路面のうねりに対してフロントサスペンションが縮み、伸び上がり、続いてリヤサスペンションが…という一連の挙動が、すべてバラバラに起きるのではなく、滑らかに連続しているような感覚。おかげで硬い柔らかいの前に身体が、目線が、ブレることなく、結果とても快適に感じるという具合だ。何となく、伝わるだろうか?

好印象はハンドリング路でさらに上積みされた。加速、減速、旋回のいずれにおいても、その反応は非常に正確。すべての動きが一貫していて先読みがしやすいから自信をもって操れる。ブレーキの抜き側のコントロール性のよさなどは、思わずうならされるほどだ。
クルマからのフィードバックも非常に濃密。それはさまざまな要因があるが、やはり前後左右のさまざまなGに対しても身体が動いてしまうことがなく、安定した姿勢を保ち続けられるのが効いているに違いない。

それはまさに卓越した人間工学の賜物である。人間が歩くときに、左右の足を交互に出し、重い頭を上下させているにも関わらず、目線が上下左右にブレたりしないのは、まさに人間が持って生まれたバランスを引き出す機能。そうした人間の持つ力を引き出す、骨盤をしっかり起こすよう導くシート形状や、ボディ、サスペンション、タイヤまでそれと一体になって考えられた新採用のSKYTACTIV VEHICLE ARCHITECTUREの実力、ここでまざまざと見せつけられた。

運動性能そのものも素晴らしい。理想に近づけたロアアーム角度の設定などにより前輪の接地性は高く、またトーションビーム式のリヤサスペンションは伸び上がり小さく、ブレーキング時でも後輪をしっかりと接地させるから、安定感もすこぶる高い。決して切れ味鋭いというわけではないが、レスポンスは正確だし、限界域の平均台の幅は広くコントロールの余地がとても大きいから、ベタな言葉を使えば自分の腕が何段階も上がったかのように、どうにでもクルマを操れるという余裕が持てる。
もしかしすると第一印象では、穏やかなクルマになったと思うかもしれないが、とんでもない。走れば走るほど、思ったとおりに操れる走りに心酔することになるに違いない。

パワートレーンにもっと魅力が欲しい

続いてセダンの2.0リットルSKYACTIV-G搭載車に乗る。こちらも基本的には同じ方向の走り味を持っていて、実際にキャラクターには変化はつけられていないという。

●セダンは、2.0ガソリンとの組み合わせで試乗。2リットルのスカイアクティブXの試乗は、まだおあずけである

それでも、ガソリンエンジンでフロントが軽く、リヤオーバーハングが大きく重いことから、同じコーナーではややリヤを振り出す素振りも見せる。そして、それ以上に気になったのが、ファストバックで感じた身体がまったくブレないあの感じが今ひとつなこと。そこまでのクルマとの一体感が得られないように思えたのは個体差か?
重箱の隅をつつけばそうも言えるが、基本的な走りの味と質に大きな差はない。一方、明らかに上を行っているのが静粛性で、自らは試せていないが、特に後席ではその差が顕著だったようだ。セダンの長所、旨味はしっかり備えている。

こんなふうに、フットワークについてはいくらでも記せるのだが、その上質感の前に、パワートレーンは少々割を食ってしまった。1.8リットルSKYACTIV-Dはパワー、トルクともに申し分ないが、特に低速域での振動、微細なトルク変動が感じられた。飛躍的に進化した車体に、ちょっと置いていかれてしまったという印象である。

一方、セダンの2.0リットルSKYACTIV-Gは、期待以上のトルク感、そして全域で感じられるスムーズさは評価できるものの、全体にフィーリングが平板でパンチがなく、サウンドもくぐもった印象で、せっかくの自然吸気エンジン、ステップATなのに、爽快感に乏しい。こちらも、やはりフットワークに見合った質のステップアップを期待したい。
そんな不満は抱きつつも、クルマ全体としてはこのマツダ3には、目の覚めるような経験をさせられたというのが率直な思いである。単純に完成度が高いと言ってもいいのだが、個人的にはクルマの走りの新しい軸が示された、とでも言いたくなるような感動を覚えた。

走り始めて数十メートルで「おっ!」と直撃するような鋭い刺激ではないかもしれない。しかしながら、噛みしめるほどにじわじわと旨味が出てきて、もっと乗りたいと思わせる力が、そこにはある。
本当は内外装のデザインやクオリティ、オーディオのクラスを超えた音質についてなど、他にも触れたいことは山ほどあったのだが、限られた文字数の中、ここではとりわけインパクトの大きかった、そのフットワークについて、じっくりお伝えした。同時にアップされている動画も、ぜひ一緒にチェックしてもらえればと思う。

ファストバック試乗動画↓↓

セダン試乗動画↓↓

〈文=島下泰久 写真=山内潤也 動画=driver@web〉

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