ボッシュ、リレーアタックを防止するキーレスシステムを初公開〈2019年ボッシュグループ年次記者会見〉

ボッシュは2019年6月25日、日本における2018年度の業績などをまとめ、記者会見を行った。

●年次記者会見ではクラウス・メーダー代表取締役社長(左)とアレクサンドレ・リーステラー取締役副社長(右)が登壇

ボッシュグループの全世界での売上高は785億ユーロとなり、営業利益は55億ユーロに達したと報告。このうち日本における売上高は約3250億円で、前年比で10%増加し、2年連続で2桁成長を記録。日本を含むアジアパシフィック地域はボッシュグループの売上高の30%を占めているという。

そのなかでもモビリティソリューションズ事業が成長のけん引役であったとし、おもにパワートレーン関連製品、先進安全運転支援分野を含むセーフティシステム向け製品、ボディエレクトロニクス製品の取引が拡大した。モビリティソリューションズ事業は前年比で11.6%の増加を記録し、これは国内の自動車生産台数の前年比成長率0.4%を大幅に上まわる高い成長率であった。さらに2019年度においては日本のボッシュグループの売上高は約5%程度増加すると予想している。

その成長を支えるのは、前述のモビリティソリューションズ事業における新技術の展開にある。

 

リレーアタック対策にも有用なキーレスエントリーシステム
「パーフェクトリー キーレス」を初公開

なかでも注目は、今回の記者会見で初公開されたキーレスエントリーシステム「パーフェクトリー キーレス」だ。これはスマートフォンをデジタルキー(電子キー)として活用するシステム。カーシェアリングやドライバーのいない配車サービスなど、複数のユーザーが利用する場面で、デジタルキーにより車両へのアクセスが可能になるなることで利便性と安全性が高まる。また、昨今話題になっているリレーアタックによる盗難に対する解決策としても有用であるという。

具体的には、スマートフォンには専用アプリをインストール。車両とスマートフォンはBluetoothを用いて紐付け(ペアリング)られる。登録されたスマートフォンをオーナーがポケットなどに入れるなど身につけていれば、車両に近づくだけで解錠され、クルマに乗り込んでエンジンの始動まで一連の動作をキーレスで行えるものだ。

●登録したスマートフォンと携帯していれば、車両に約2mまで近づくと解錠する

現在の標準的なキーレスエントリーシステムでは、長波と極超短波周波数で車両との通信を行っているが、この電波を無線転送して本来の持ち主以外の人がクルマを解錠しエンジンを始動できてしまう。いわゆるリレーアタックによる車両盗難被害に合いやすい状況を、車両側と操作キーのどちらもが持っているわけだ。

「パーフェクトリー キーレス」は、スマートフォンに内蔵されたBLE(Bluetooth Low Energy)チップがリレーアタックを防止するために役立つ。それはBLEチップごとに電波の特性が異なっており、その特性が適合した場合のみ作動するからだという。リレーアタックのようにデータの無線送信を試みるほかの電子機器の信号をブロックでき、これによって、車両への不正アクセスを防止するのだ。オーナーが所有するスマートフォンと車両のペアリングを済ませてしまえば、仮に不正に複製されたデータを別のスマートフォンなどの通信機器に登録しても、チップの特性が合致せずに車両側のシステムは作動しないのだ。

でもそれだと、ほかの家族がクルマにアクセスできなくなってしまうのでは? という疑問も当然生まれるが、心配はいらない。デジタルキーはクラウド上で管理されており、オーナーがクルマを使うほかのユーザーのスマートフォンを使用者として登録すれば、登録されたユーザーが自身のスマートフォンを携帯していれば問題なくクルマを使えるようになる。

●ほかのユーザーも所有するスマートフォンを登録すればキーレスでクルマにアクセス可能。デジタルキーはクラウド上で管理されるので、遠距離でも設定可能だ

宅配便の受け取りに車両のトランクを利用できる!?

このほか、「パーフェクトリー キーレス」が搭載されたクルマはほかにも便利な活用方法がある。クルマのトランクを宅配便の荷物受け取り用ボックス代わりにも活用可能だという。スマートフォンのアプリでトランクの開け閉めのみ許可するデジタルキーを宅配業者に通知すれば、不在時でも荷物の受け取りが可能。宅配業者は届けた荷物をトランクに収納してトランクリッドを閉めるだけ。これで荷物を安全に保管できる。このほかウインドーの開閉操作などの遠隔操作もスマートフォンのアプリで操作可能。これらのシステムは、採用する自動車メーカーが必要なものがあれば追加できるように設計されているという。

ただ、スマートフォンを置き忘れ紛失したり、バッテリー切れを起こした場合はどうすればいいのだろう? 目の前にクルマがあってもアクセスできなくなるし、サポートサービスへの連絡手段も絶たれた状況下でいかにして解決するのか?

その対応策としては、パソコンなどでクラウド上のサーバーにアクセスして紛失したスマートフォンに利用制限をかけることが可能だとしている。ほかに、NFC(近距離無線通信)方式の非接触型ICカードとの併用などで対応することも考えられるとしている。これも採用する自動車メーカーによりさまざまな組み合わせが想定できるそうだ。

 

●ほかの人にデジタルキーを渡すときには、操作を限定しての登録も可能。写真は”宅配便の受け取り場所”としてトランクのみ解錠できる設定にしたところ

「パーフェクトリー キーレス」は個人所有のクルマだけでなく、多数のユーザーが同じクルマを使用するカーシェアリング用車両や、運送会社などが所有する営業車などでも活用可能で、これらを含めて2021年の実用化を目指して開発が進行中だ。

●車両にはBluetooth用アンテナと制御システムを搭載。通常のキーレスエントリーシステムに置き換わることを想定している

 

 

<写真と文=編集部>


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