2020年発売のマツダEV。その試作車に緊急試乗。バッテリー容量35.5kWhに留まるマツダらしさ

音も聞かせてスムーズさを追求

試乗車「e-TPV(TECHNOLOGY PROVE-OUT VEHICLE)」はあくまでテスト車両。市販時には備わる予定の回生協調ブレーキがなく、ペダルを踏み込んだときには通常の油圧ブレーキだけが働く仕様だったことを予めお断りしておく。

発進、加速、そして巡航に至るまでの段階で感じたのは、走りのリニアリティが非常に高いということだ。出力数値を見ると、最高出力は105kW、最大トルクは265Nmとある。電気モーターは低回転域から大きなトルクを発生できるため、EVといえば出足の加速が鋭いというイメージがあるが、e-TPVの加速感はあくまで自然でスムーズだ。

それにはサウンドの効果も多少はありそう。じつはe-TPVはエンジン音を模したのではない独自の音をドライバーに聞かせている。これもまた車両の状態を把握するのに大きな力を発揮しているという考えに基づくものだ。せっかくのEVだけに、静かに乗りたいという思いもある一方、例えば加速時の音の盛り上がりがクルマとの一体感を増幅するのも確かではあって、結論は難しいところだが…。

そしてアクセルをわずかに戻すと、強過ぎない軽い減速Gが発生する。ワンペダルドライビングを標榜するモデルは、この加速から減速に切り替わる過程でギクシャクした動きを見せるものも少なくないが、e-TPVはここが見事。おかげで一定速度での巡航も非常に楽にこなすことができる。

試乗車は前述のとおり、回生協調ブレーキがないために、もう少し減速力が欲しいというときにブレーキペダルに足を乗せても、レスポンスがイマイチと感じられた。しかし、それも市販の際には解消されていると考えれば、ドライバビリティは相当なレベルに到達しそうと思えた。

独自デザインをまとい、
10月の東京モーターショーで登場?

●今回公開された試作車のスペック。もちろん急速充電のCHAdeMO規格だ

コーナリングもまた爽快だった。まずボディの剛性感が高く、低重心で前後バランスがいいという土台があった上で、内燃エンジン車よりきめ細かな制御の可能なGVCが効果を発揮しているのだろう。まさにシームレスな挙動の繋がりは、月並みな言葉で言えば自分の運転が格段にうまくなったかのように感じさせる。いたずらにシャープだったり、思った以上に曲がっていったりするのではなく、まさに意のままになる走り。短い試乗時間が恨めしくなる、ずっと遠くへ行きたくなる走りの世界が、そこには実現されていた。

この走りの感触は決して真新しいものではなく、マツダが特にここ数年、目指してきた世界そのもの。マツダ3で具現化されたものの延長線上にある。EVのメリットをフルに生かすことで、その次元をさらなる高みへと引き上げた。そう評するのが正しいだろう。内燃エンジンに並々ならぬこだわりを見せるマツダだが、いやそうだからこそ出来たEVだと言ってもいいかもしれない。

今回試乗したe-TPVはCX-30の外観となっていたが、市販の際にはオリジナルのデザインが与えられる模様。それはスタッフによれば「未来を感じられる」仕上がりだというから楽しみにしたい。そんなEV技術を搭載した新型車は2019年10月に披露(東京モーターショー?)。発売は、何と2020年にも開始される模様である。

〈文=島下泰久 写真=マツダ〉