まさかのトリプルアクセル!? スケート場 de 電動カートの アカルイ未来

●デモ走行後、両手サムアップで笑顔の津々見友彦さん(奥は斎藤 聡さん)
●KOSE新横浜スケートセンターは、ドリーム・オン・アイスショーで「静香さん」や「真央ちゃん」も滑るブランドリンクだ

日産スタジアムではJ1リーグの横浜F・マリノス対浦和レッズ戦を控え、行き交う両サポーターでにぎわう7月13日(土)。同じく神奈川・横浜市にあるKOSE新横浜スケートセンターで、新たなモータースポーツ発足に向けたプレイベントが開催された。

CO2ゼロ! 地球温暖化防止 世界初! スケート場でドリフト!! —電気レーシングカートが氷の粒を巻き上げて走る—

●「オープニングであの荒川静香さんが……滑るわきゃないと(笑)」。いきなりのタテウチ節で笑いを誘った舘内 端代表

「排ガスもCO2も出さず、再生可能エネルギーを使用でき、地球温暖化を防ぎつつ、アクセル全開で楽しめる “持続可能な” 21世紀の都市型電気氷上スポーツとして『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sports』(仮称)を提案。……なんて難しいことはさておき、性別、年齢、経験や障がいの有無にかかわらず “おもしろい” スポーツであることは保証します」とは、日本EVクラブ代表の舘内 端さん。本誌連載でもおなじみの、おもしろ電気おじさん(…失礼)だ。

本イベントは、EV(電気自動車)を中心としたエコカーの普及活動に取り組む一般社団法人「日本EVクラブ」主催による “氷上をEVカートで走る” というもの。

●EVカートなのでもちろん排ガスゼロ。氷上走行用に出力は抑えられているが、0→30㎞/hは1秒7と十分な加速性能だ

舞台となる30m×60mのフィギュアスケート公式リンクを走るのは、動力をエンジンからモーター+バッテリーにコンバートした4台のERK(エレクトリック・レーシング・カート)だ。大人用の2台は、最高出力4.8kWのブラシ付きDCモーターに12Vの鉛蓄電池を直列につないだ1.62kWh・48V仕様。子供用は、同形状のモーターを2つ配置(計2kW)し、左右後輪を別々に駆動(トルクベクタリングと)することで扱いやすい仕様とした。こちらのバッテリーは1.5kWh・30V仕様で、日産リーフのリチウムイオン電池を再利用している。

●カート用のスタッドレスタイヤはアメリカのレース仲間経由で送ってもらい、これに鋲を打ってスパイクタイヤ化した

氷上を走るうえで一番苦労したのはタイヤだったと、舘内さん。日本にはカート用のスタッドレスタイヤがなく、これをアメリカから取り寄せ。さらにスパイク(鋲)を打ったスペシャル仕様とした。今回は、スパイクの数を変えた3種類のタイヤを用意。打つ場所や個数、また、モーター出力のプログラミング変更をすることで、競技形態やドライバーの技量に合わせた細かな変更も可能だという。

●老若男女誰でも参加可能なスポーツにすべく、デモ走行ドライバーの年齢・スキルも幅広い
●「孫には本当は乗せたくなかった」という津々見さん。カートの楽しさに気づいてしまうから…だそう

報道陣や一般参加者の体験走行に先立ち行われたデモ走行には、元レーシングドライバーの津々見友彦さん(御年79歳)をはじめ、自動車ジャーナリスト界屈指のドライビングスキルを持つ斎藤 聡さん、「ahead」編集長の若林葉子さん、また、カート初体験だという津々見さんのお孫さん(小学5年生)も参加。パイロンが置かれた特設コースで、電気モーター駆動のレーシングカートが豪快なドリフトを披露した。

●デモランでは日本EVクラブのイベントではおなじみの片岡英明さん(手前)と斎藤 聡さんによるミニレースも披露

筆者も体験させてもらった。恐る恐るアクセルを開けると、無音のまま後輪にしっかりとトルクが立ち上がり「シャ〜」っと氷をかきながら、思いのほかグリップする。とはいえ、スニーカーでは立つのもやっとなツルツルのスケートリンク。気を抜いてアクセルを踏み足すと、小さな車体は「すぅ〜」っと横を向いてしまう。そこで、少しカウンターを当てて慎重なアクセル操作を心がけると、前輪を軸にアングルを保ったまま(感覚的には)きれいに曲がれた。これは楽しい! オンロード上のレーシングカートに比べ一連の動きはスローなのだが、操作そのものは同じ。慣れてくれば、必要最小限の操作で姿勢を制御できる。

●その気になれば(もちろん適切な操作で)アクセルコントロールだけで曲げることも可能なのだ

「滑りやすいから、急ハンドル、急ブレーキ、急アクセルができないでしょ。だから、先の動きを読んで的確な操作をしなくちゃいけない。それって、公道での運転も同じ。この3つの急をやめれば、安全・エコドライブにもつながるよね」とは、斎藤 聡さん。確かに。これは高齢者の運転講習にも最適だろう。

難しい話をひとつだけしますと

「前述した『SDGs』。これは “エス・ディー・ジーズ” と読むのですが、これは、国連が主導する新しい行動パターンのこと。われわれ一般人も、企業も、行政も政治家も “ちゃんと約束を守りなさいよ” という17項目くらいから成るもので、一番大きな課題は、地球温暖化と気候変動の防止です(あと廃プラ=廃棄プラスチック削減運動も)。その、サステナブル(持続可能)なかたちでの支援として期待されているのが “スポーツ” です。来年2020年に開催される東京オリンピックが、スポーツにおけるSDGsへの、世界最初の大きな取り組みになります」

●「地球温暖化防止のためにCO2を削減するだけではなく、そうなったときに何か起こるかを想定し、どう対応するか。それを考えるべき時期にきていると思います」(舘内)

大変つらい話ですが…

「現在、自動車がどれくらい地球温暖化の原因になっているのか。それは、世界が出す温暖化物質の25%。つまり4分の1。自動車が出すCO2をすべて削減できると、中国1国がCO2を出さなくなるのとほぼ同じ。ですので、世界の多くがSDGsの方向へ向かったときには、当然モータースポーツもCO2を出せなくなるだろうと。フォーミュラEレースも始まり、どうやらWRCや二輪GP(motoGPなど)も、今後は電気になっていく。今後、モータースポーツの発祥であるヨーロッパが主導となり、動力源を電気に代えていくことがハッキリしてきました」

●ERKの氷上走行のほか、電動スケートボード(愛称:電助)のサプライズデモランも。なにげにスゴい!

「じゃあ “これでモータースポーツは終わりか…” といったときに、“もしかしたら、電気なら楽しくやれるかもしれない” と。そして、もしそれが再生可能エネルギー(太陽、風力、地熱など)で発電した電気であれば、たとえアクセル全開で走ってもCO2を出さないんです。全開と言っても、公道でやってもらっちゃ困りますが(笑)。そういうこと(楽しみ)が可能性として残っているよ、ということを、私も責任上、皆さん、特に若い人に伝えていきたいと思っています」

●ちなみにスパイクタイヤのリンクへの影響は、フィギュアスケートやアイスホッケーと比べても大差ないという

ダメもとで舘内さんが直々に新横浜スケートセンターの担当へ会場提供お願いすると、主旨を理解いただきOKが出た。「ここ(新横浜)でOKが出れば、全国のスケート場で走れるようになる。こんなかたちでスケート場のお手伝いができ、(スケート場が)元気になれば、いつか次の荒川静香さんや浅田真央さんが育ってくれるかもしれない。これはあまり力になれないかもしれませんが」(舘内)。

●ドラマチックなライティングとBGMの下、華麗な演舞が楽しめるか?

今後、『SDGs Urban Electric Four-Wheeled Ice Sport』はいくつかのヒントを基に、今秋にも再度ミーティングを開いておおよその競技形態を決め、来年2020年の冬までには何かしらの競技会を開催する意向。そのときは、荒川静香さんとERKの共演が見られる……かもしれない。

(本誌・土田)

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