【試乗】第二世代GT-Rをリファインする 2019ワークスチューニンググループ合同試乗会-NISMO編-

自動車メーカー直系チューニングブランドであるTRD(トヨタ)、NISMO(日産)、STI(スバル)、無限(ホンダ)の4社で構成される「ワークスチューニンググループ」。主戦場のモータースポーツではしのぎを削るライバルだが、“サーキットの外”アフターマーケットでは、互いに競合しない立場にある。そこで、各社が情報交換をしながらそれぞれのブランドのレベルアップと商品開発の効率化を目指している。また、モータースポーツやスポーツドライビングの振興を目的に、毎年各地でサーキット試乗会などの活動を合同で行っている。

その活動の一環としてメディア向けの合同試乗会を実施。各社こだわりのアイテムを装着したマシンを一気に試せる機会を設けている。2019年は、前回まで2年連続で開催された群馬サイクルスポーツセンターから「ツインリンクもてぎ」の北ショートコースに場所を代えての開催となった。

NISMO編


第二世代GT-RのNISMO的カスタマイズ

ニスモでは長年のレース活動で培われたノウハウを生かし、現行(R35)と第二世代(BNR32、BCNR33、BNR34)、それぞれのGT-Rに対するカスタマイズプランを提案。いずれもCRS(CLUBMAN RACE SPEC)仕様で、そのコンセプトは「サーキット走行を丸1日たっぷり楽しみ、自走で帰宅できるクルマ」というもの。ストリートからサーキットまで幅広いフィールドでの扱いやすさを目指して、各種パーツやエンジンの開発、車両のセットアップを実施している。

13年モデルベースのCSRを試す!

2007年に登場したR35GT-R。年次改良やマイナーチェンジでたゆまず進化し、12年を経た現在でも国産スーパースポーツの名に恥じないパフォーマンスを維持し続けている。これまでワークスチューニンググループの試乗会には初期型の08年モデルをベースにしたCRSを出展してきたが、今回は中期型の13年モデルがベース。おもなメニューは「S1」と呼ばれるVR38DETT型エンジンのチューニングとオーバーホール、初期型(08~11年モデル)用として現在販売中のエアロパーツ、軽量化と空力性能を向上させたカーボンフード(開発中)など。足まわりはGT-RニスモGT3、Nアタックパッケージで実績のあるオーリンズ社製4ウェイをベースに、国内サーキット向けにセッティングを施したニスモオリジナル仕様のサスペンションキットを装着している。

いまだに根強い人気を誇る第二世代スカイラインGT-RのCRSは、ニスモヘリテイジパーツ(製造廃止された純正パーツを日産自動車の協力を得て復刻)を活用して各部をリフレッシュ。加えて、新たなチューニングメニューやパーツを開発・投入することでパフォーマンスをアップデートさせている。これから10年、20年先を見据えて、第二世代GT-Rをベストコンディションで「動態保存」させるための理想的なメニューといえよう。

08モデルのCSRはストリート向けの味付けだった

新車保証が切れた初期~中期型GT-RでもCRSに仕立てることで、現行モデルに匹敵するパフォーマンスを得られるのは既存ユーザーや中古のGT-Rを検討している人にとっては朗報だろう。これまでニスモでは08年モデルのCRSをワークスチューニンググループの合同試乗会に持ち込み、「街乗りでも快適なGT-R」を訴求。足まわりの味付けが硬質で、GR6型DCTの変速時のつながりに「唐突感」のあった初期型はスパルタンな印象だったが、トランスミッションのオーバーホールや足まわりの設定変更でそれらすべてがスムーズかつ滑らかになり、路面の荒れた群馬サイクルスポーツセンターのタイトなコースでも乗り心地のよさやしなやかな身のこなしが際立っていた。

 


“タイムが出せる”乗りやすいセッティング

今回のCRSは13年式ブラックエディションがベース。思いっきりストリート寄りに振った昨年までのCRSとは異なり、フロントに1.5ウェイ、リヤに2ウェイのLSDを組み込み、サスペンションもレースやニュルアタックで実績のあるオーリンズの4ウェイを使うことで富士スピードウェイなど国内の高速サーキットでしっかりタイムを出せる仕様になっているという。

VR38DETT型エンジンはフルオーバーホールに加えて、GT3仕様カムシャフト、11MY(モデルイヤー)純正ターボチャージャー、専用ECU&TCMを組み込んだ「S1」と呼ばれるチューニングメニューを施工。最高出力は17年モデルの基準車、最大トルクはニスモ並みに引き上げられている。

試乗コース(ツインリンクもてぎの北ショートコース)はコーナーがタイトなうえに、速度制限のためにパイロンで仕切られ、CRSに秘められたパフォーマンスのすべてを堪能することは叶わなかったが、まるで大排気量NA(自然吸気)エンジンのように、低回転域からフラットにトルクが沸き上がるS1エンジンのおかげで、コーナーの立ち上がりからためらうことなくアクセルペダルを踏み込める。北ショートはコーナー間の距離が短く、アクセルのオン/オフを繰り返すことになるのだが、こうした場面では加速レスポンスの善しあしが乗りやすさ、扱いやすさに直結する。たとえばアクセルのツキが悪いと「ちょっと強めにアクセルペダル踏み込んだら急にターボが効き出してリヤが流れる」といった恐れがあるのだが、CRSはそうした「唐突感」がいっさいなく、前述したフラットなトルク感と適切なエンジンマネジメントによって、アクセル開度に比例した素直な加速力が得られる。

“GT-R使い”柳田真孝氏が魅せるCRSの妙味

どんなに「扱いやすい」とはいっても、最高出力404kW(550ps)/6400rpm、最大トルク632Nm(64.5kgm)/3200~5800rpmを発揮するモンスターマシン。そこで、2011~12年のスーパーGT GT500クラスでGT-Rを操り2年連続のシリーズチャンピオンに輝き、GT-RニスモGT3(18モデル)の開発を担当するなど「GT-Rの名手」であり、ニスモドライビングアカデミーで副校長を務める柳田真孝氏にステアリングを委ねて、「13CRS」に秘められたポテンシャルを解き放ってもらった。

Rモードにセットし、コースインするやいやなCRSをまるで自分の手足のように操る柳田氏。すべてのコーナーで車体を横に向けながらクリアしていく姿は、助手席から見ていてもほれぼれするほど。ステアリングさばきやペダルワークをじっくり観察しながら、柳田氏と雑談する余裕があるのは、ひとえに前述したS1エンジンのフラットな特性と、縁石に乗り上げても衝撃を過度に伝えないオーリンズのしなやかな乗り味のおかげ。

「サーキットを走るからといって、あまり尖ったセッティングにしちゃうと逆に意のままに操るのが難しくなります」と語る柳田氏。アクセル&ブレーキ操作をきっかけにした挙動変化を作りやすい足まわりと、素直な特性のエンジン、前後LSDのおかげで「よく曲がる」パワートレーンが三位一体となり、後輪を滑らしながらのドリフト走行からタイムを削るグリップ走行まで自由自在な走りを実現。乗り心地を確かめるためにサーキットの外周路を試乗してみたが、凹凸路やマンホールを乗り換える際の「いなし」が効いていて、シートに伝わる突き上げは最小限に抑えられている。段差でのエアロの干渉さえ気を遣えば、普段使いも難なくこなせる印象だ。

ちなみに、VR38DETTのオーバーホール+S1は230万円~、スポーツサスペンションキットは151万円(ともに工賃込み)。GT-Rをアップデートしながら長く乗り続けたいという人にはじゅうぶんに価値のある内容だと思う。

 


「NISMOヘリテージパーツ」でリフレッシュする

BNR32は1989(平成元)年、BCNR33は95年、BNR34は99年デビューと、第二世代GT-Rも「ネオクラシック」の部類に入り、もはやチューニングうんぬん以前にフルレストアを検討しているユーザーのほうが多いはず。年々純正部品が製造廃止になるなかで、この数年ニスモが取り組んでいるのがGT-Rを少しでも長く乗り続けられるようにサポートする「NISMOヘリテージ」活動。

製造廃止になった純正補修部品を復刻生産する「NISMOヘリテージパーツ」はその一環で、純正部品と同じサプライヤーで復刻生産した「純正復刻品」と、純正部品の図面をもとにニスモが新規製造した「ニスモリプレイス品」をラインアップ。第二世代GT-RのCRSはヘリテージパーツを活用することでフルレストアを施し、RB26DETT型エンジンは32と33が「S2仕様」、34は「R2仕様」にバージョンアップ。合わせてボディ補強やパワートレーン、サス、ブレーキも強化。

いずれも展示・置き撮りのみで試乗はかなわなかったが、撮影のためにわずかな距離を移動させただけでもボディのしっかり感やRB26エンジンの精緻な吹き上がり、コンディションのよさが伝わってきた。ヘリテージに関してはE-TS油圧ユニットの修理受付がスタートするなど、さらなるラインアップの拡充とサービス内容の充実が期待される。

 

<文=湯目由明 写真=山内潤也>


NISMO(ニッサン モータースポーツ インターナショナル)

https://www.nismo.co.jp