幻のスーパーカー「日産MID4」はサラブレッドの足運びにヒントがあった!? 名エンジニア桜井眞一郎が語るそのコンセプト

1985年の東京モーターショーに登場したコンセプトカー、MID4。3000ccV6エンジンをミッドシップにマウント、フルタイム4WDに後輪操舵「ハイキャス」を組み合わせたマシンで、完成度の高さから市販化目前か!?と言われていた。
マシンのねらいは「誰もが速くはしれるクルマ」というものだった。そのためのミッドシップ、4WD、ハイキャスで、ヒントはサラブレッドの足の動かし方にあったと開発に携わった桜井眞一郎氏は当時語っている。
そのコメントには、ミスタースカイラインと呼ばれ、またレーシングマシンの設計も手掛けた名エンジニアのクルマ作りに対する思想が垣間見えた。1985年、日産MID4メディア向け試乗会で行った桜井氏へのインタビューを改めて紹介したい。


4本の足で走る「4WD」、後ろ足も使って曲がる「ハイキャス」

MID4のようなクルマをやろうと一番最初に考えたのは昨年(*1984年のこと。以下同様)の3月ごろだったと思います。2~3人の、いわば「好き者」が集まって始めたわけです。実際に始まったのは昨年の6月ごろですから、まだ1年とちょっとしか経っていません。
R380などレースをやっていましたから、こういうクルマを短時間で手際よくやれちゃうわけですね。

レースでもそうですが、こういうクルマというのはコンセプト、レイアウトの段階というのが大変仕事なんですね。そのなかでありとあらゆるケースを考えながら、これでどうだ、これでどうだ、というのを詰めてゆく。そして、よしこれだというのが出たらパッとはいっちゃう。あとは、迷わない、迷わない。
それと、クルマを作るうえで船頭がたくさんいると、そのクルマはダメになっちゃいますね。ああでもない、こうでもないってつっついちゃダメですね。

企業だから商品を作らなくちゃいけないことは事実なんです。しかし、こういう(MID4のような)クルマは、商品というより作品なんです。作品と商品との間で妥協しなくちゃいけないが、どっちかというと作品に近くていいんです。クルマというのはこうなくてはならない、というのを具現化していくことも(企業として)必要だと思います。船頭が(たくさん)いないという意味では、こういうクルマを作るのは面白いですね。

●メディア向け試乗会でMID4のコンセプトや開発背景を語る桜井眞一郎氏。プリンス自動車時代からスカイラインの開発に携わり、3代目〜7代目のスカイラインでは開発の総指揮を執った。R380などレーシングマシンの開発も担当した。

私のクルマ作りは、自然界に教えを請うというやり方です。サラブレッドは4本の足で蹴り、曲がるときは前足だけでなく、後ろ足も微妙に動かしている。これが4WDとハイキャスの考え方です。さらにストップするときは4つの足で安定をとっている。ということは、アンチスキッドブレーキは4輪でやるべきだろう。そして、臓物は前後の足の間に配置している。つまり、ミッドシップであるべきだということになるわけです。

MID4に乗れば、総入れ歯のおばあさんでも長谷見(昌弘選手)や星野(一義選手)と互角に走れる──そんな乗りやすくて、速い車、ある意味では「つまらないクルマ」こそ、これからMID4を熟成してゆくうえでのひとつの方向だと考えています。

●当時国産最強クラスとなる最高出力230馬力の3000ccV6エンジンを横置きにミッドシップマウントし、フルタイム4WD、後輪操舵「ハイキャス」を組み合わせたMID4。実際に走行が可能なほど造り込まれており、メディア向け試乗会も行われた。

当記事は1985年ドライバー誌11月20日号の記事を再構成したものです。

(レポーター●萩原秀輝 写真●齋藤 賢/茂垣克巳 編集●オールドタイマー編集部・上野)

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