雪道で優先するのはエンジンブレーキ? それともフットブレーキ?【昭和なドラテクを再考察】

メディアの発信が混乱を招いている!?

前回は、内掛けハンドルを昭和なドラテクとして厳禁とした。予想どおり、疑問や否定的な意見も届いている。でも、とにかく自分のステアリング操作はどうなのかって見直してくれる機会になれば記事としての価値はあると思うんだよね。

まだやってる? 内掛けハンドルは百害あって一利なし

さてと、今回も昭和なドラテクのハナシをしよう。それは、雪道での走り方についてだ。東京でも降雪が記録される昨今、(今シーズンは少ないが)非降雪地域に住む人も雪道を走る機会は少なくないはず。積雪地域に住む人なら、冬期のドラテクについては経験的に身についている。ただ注意したいのは、シーズン前に降雪に備えるための主に非積雪地域に住む人に向けたメディア発信の記事だ。

いまだに、ドラテクも基本として「雪道ではエンジンブレーキを使おう」なんて紹介されている。滑りやすい路面でエンジンブレーキなんて、まさに昭和なドラテク。もちろん、エンジンブレーキが有効な場面もある。でも、決まりごとのような伝え方はマズイ(自動車メーカーの公式SNSなどでも、「雪道ではエンジンブレーキ」と伝えていたりする)。

たしかに、ABS(アンチ・ロック・ブレーキ)が一般的ではなかった昭和なら、滑りやすい路面でブレーキペダルを少しでも強く踏みすぎればタイヤがロック(クルマが走っているのにタイヤの回転が止まっている状態)を起こし制動力は確保できても旋回力が得られない状態に陥りやすかった。それを防ぐために、低めのギアを選択し、アクセルを戻すだけで済むエンジンブレーキがドラテクの基本として推奨されていたわけ。

ABSが普通の時代、雪道ではフットブレーキを優先

だけど、時代は平成を過ぎ令和に変わっている。平成ではABSが一気に普及。2012(平成24)年からはABSを含む横滑り防止装置の新車装備が順次義務化。ABSを装備していれば、タイヤのロックを自動的に防ぐ。いわば、そんな保険がかかっているからこそ穏やかなペダル操作を心がける余裕が得られるというもの。そして、万一の際にはペダルを強めに踏めばABSによりその路面で得られる最適な制動力と旋回力が確保できるから、危険回避の可能性も高くなるでしょ。

もっと重要なことは、フットブレーキはペダル操作により4輪の制動力が発揮されるということ。さらに、前後または左右の制動力配分を最適化するEBD(エレクトリック・ブレーキフォース・ディストリビューション)もABSの機能をアシスト。タイヤのロックが防げることが前提となれば、フットブレーキによる減速のほうがクルマをより以上に安定させやすいといえるよね。

エンジンブレーキについては、駆動輪でしか働かないことにもっと注目すべきだよ。FFなら前輪、FRなら後輪ということ。エンジンブレーキを使うのは減速時だから、特にFFの場合はリヤの荷重が減るのでクルマの安定性確保に影響が生じる。下り勾配ならなおさらだ。FRも荷重が減っているリヤでエンジンブレーキを効かせることになる。

その意味では、4WDはFFやFRと比べればエンジンブレーキが有効な場面は多い。それでも、前後にどう減速のための駆動力(ヘンないいかただけど)が配分されるかはシステムによって異なるし、そもそものエンジンブレーキの効き具合は前後重量配分ともかかわるからことも見逃さないでほしいんだ。

つまり、現在のドラテクでは滑りやすい路面でもフットブレーキが基本ってこと。駆動輪にしか働かないエンジンブレーキに頼りすぎることは避けたほうがいい。アクセルを戻したときに明らかな減速感があるようなギアを選択したエンジンブレーキは、かえってクルマを不安定にする原因になりかねない。

とはいうものの、エンジンブレーキを全否定するつもりはないよ。たとえば、交差点などで停止する手前で早めにアクセルを戻し徐々に減速するとか、下り勾配で一定の速度を保つ程度のギアを選択するとかは、積雪地域に住む人なら当たりまえのように実践しているドラテクだろうけどね。

〈文=萩原秀輝〉