
新型タントが登場して、軽スーパーハイトワゴン市場もさらに盛り上がること間違いなし。というわけで今回はタント、Nボックス、スペーシアそれぞれの特徴を確認しつつ、どのモデルが買いなのかモータージャーナリスト丸山 誠がジャッジを下した。
写真=山内潤也
スズキ スペーシア ギア


スペーシアをベースにSUVテイストに仕上げたのがギアだ。軽自動車にもSUVやSUV風のモデルは存在するが、スーパーハイトワゴンにこうしたモデルを設定したのは初。大ヒットしたハスラーで培ったノウハウが生きているのだと思う。ハスラーと同様の丸形ヘッドライトを採用し、前後バンパーをスキッドプレート風にアレンジしたことで独特の存在感を生み出している。
デザインに注目が集まりがちだが、スペーシア ギアは標準車と同様にマイルドハイブリッドを搭載しているのが特徴。スズキお得意の発電機を駆動モーターとしても利用するISG(インテクレーテッド・スターター・ジェネレーター)で、駆動用の小型リチウムバッテリーを搭載している。加速時にモーターアシストするのはもちろん、クリープ走行をモーターで行うため、渋滞時にちょっとだけ進むのにもエンジンをかけずに走行可能。




ギアというネーミングだけあって、荷室は汚れた遊び道具などを気にせず載せられるように防汚仕様になっている。荷室フロアはもちろん、後席裏面も防汚仕様のため泥が付いたままの自転車などを載せても、汚れは簡単に拭き取ることが可能。汚れを気にせずガンガン使えるのが魅力だ。
ダイハツ タント




タントの特徴は、なんといっても「ミラクルオープンドア」だ。左側Bピラーレスによるミラクルオープンドアは開放感にあふれ、開口面積自体も大きい。ほかのスーパーハイトワゴン(ホンダNバンは商用車)にないもので、今回はその機能を拡大させる「ミラクルウオークスルーパッケージ」を採用した。世界初の運転席ロングスライドシートは後席近くまで540mmもスライド可能で、簡単にウオークスルーができる。例えば後席左側にチャイルドシートに座らせた子供がいるとすると、運転席を後方にロングスライドさせると無理な姿勢をしなくても子供のケアができる。また降車時は、子供と一緒に安全な左側スライドドアから降りられたりと、メリットは大きい。


走りの面ではプラットフォームを刷新し、DNGAを新採用したことが効いている。ボディ剛性感が高くなり走りの質感がアップ。市街地走行ではロードノイズが先代より抑えられたことがはっきりわかるし、荒れた路面を走っても突き上げ感が小さく乗り心地がいい。路面によっては少しだけステアリングに微小な振動が伝わることがあるが、ボディはもちろんフロアに振動は伝わらない。先進安全装備ではACCが全車速対応で停止まで制御まで行ってくれ、レーンキープも装備された。だがACCが停止保持をしないのは、なんとも残念な点だ。
ホンダ N-BOX


日本でもっとも売れているのがNシリーズ。そのなかでも売れているのがNボックスだ。直線基調のボクシーなスタイルだが安定感があり、軽自動車であることを感じさせない存在感がある。標準車はリングタイプのスモールランプが特徴の丸形LEDヘッドライトがかわいいし、カスタムは薄型LEDヘッドライトを採用してクールなスタイリングに仕上げている。改めてNボックスに乗るとインパネやメーターのデザイン、シート作りなど各部の質感が高いことがわかる。特にメーターパネルのデザインやディスプレイはコンパクトカー以上の質感で、上級ミニバンに迫る雰囲気。



使い勝手のよさも売れている理由。センタータンクレイアウトによって後席の自由度が他車よりも格段に上。後席座面をチップアップできるのが大きな特徴だ。スライドドアから大きな荷物を後部スペースに載せることができ、車内高が1400mmもあるため子供の着替えも車内でできる。Nボックスが選ばれる理由は、先進安全装備のホンダセンシングを標準装備していること。ACCは約30km/h以下で解除されてしまうのが残念ではあるが……。車両価格は高いが、装備が充実していて各部の質感が高く、走りもいい。というわけで、この3台ならぜひNボックスをお薦めしたい。
