同メーカー内でのマルチクラッシュ!「SUPER GT×DTM 特別交流戦」が熱くて楽しすぎたワケ

2019年のモータースポーツの締め括りとして、11月22〜24日に富士スピードウェイで、SUPER GT×DTM 特別交流戦が開催された。結論から言うと、これがすさまじく楽しく、盛り上がるレースとなった。これからも毎年とは言わずとも、2年に1度くらいは開催してほしい。そう切に期待したくなるほどに…。

そもそも日本を代表するカテゴリーであるSUPER GTと、ドイツを代表するDTMが、こうして合流するに至るまでには長い経緯があった。日本側にあったのは、長らくトヨタ、ニッサン、ホンダの国内3メーカーだけで争われてきたレースに新たなメーカーの参戦を期待したい、アジアでもレースを開催しているようにグローバル化をさらに推し進めたい、一方でコストをうまくコントロールしたいという思惑。対するドイツの側には、メルセデス・ベンツとオペルから始まった現行DTMが、アウディを招き入れ、BMWも加わるもののオペル、そして昨年にはまさかのメルセデス・ベンツが撤退してしまうなど不安定な状況が続いていただけに、マーケティング的な意味も含めてアジア、そして当初は含まれていたアメリカのIMSAシリーズなどを視野に入れられるカテゴリーに発展させたいという考えがあった。

そんな話が持ち上がったのは2009年前途のことだから、10年かけてやっとここに到達したことになる。それまでに両社はクラス1レギュレーションとして共通CFRP製モノコックの採用、空力ルールの統一など、車両規則の統一化をじわり進めてきており、ついに2019年、DTMのエンジンも共通の直列4気筒2Lターボとなったことで、初の交流戦が実現することとなったのだ。

もっともSUPER GTとDTMは、あくまで別のカテゴリーの違うレース。車両規則以外に多くの相違点がある。SUPER GTがタイヤ競争有りの耐久レースで2人のドライバーでマシンをシェアするのに対して、DTMはワンメイクタイヤのスプリントレース。しかも空力やエンジン開発などにも、実際は大きな違いがあったという。それが、この交流戦ではルールが可能な限り統一化され、またタイヤもハンコックのワンメイクとされた。

10月にまずはドイツ ホッケンハイムにて、土日に1レースずつ予選、そしてスプリントレースの決勝を行なうDTMルールで開催された交流戦では、日本勢は大いに苦戦を強いられることとなった。特に、日本で使われているのとはまったく異なるタイヤ特性に、うまく合わせ込むことができなかったということが理由として挙げられている。

それだけに、日本勢にとってはまさにリベンジの機会となった富士。日本勢のマシン、ドライバーは、J.バトン選手以外はほぼSUPER GTのレギュラーがそろい、ドライバーは土日それぞれ1人ずつが乗った。一方、DTM勢の布陣は交流戦スペシャルとでも言うべきものに。BMWは2度のDTMチャンピオンであるM.ヴィットマンに加えてBMWのアンバサダーを務めるA.ザナルディ、そして日本の小林可夢偉の3人。アウディは今年のDTMチャンピオンであるR.ラスト、2013年のチャンピオンであるM.ロッケンフェラー、さらに日本でもお馴染みのL.デュバルにB.トレルイエの4人、4台が参戦した。残念ながらRスポーツのアストン・マーティンは参加していない。

さて、こんな陣容だけにお祭り的なものになるのかと思いきや、レースはサイコーに白熱したものとなった。何がそうさせたのかと言えば、まずSUPER GT勢としては耐久ではなくスプリントレース、しかもウェイトハンディなしだったことが大きい。じっくり様子を見て…なんて悠長なレースをしている場合ではなく、プッシュし続けなければ勝てないのだから皆、自然と必死になる。しかも、マシンはそれにイコールな状況でしかと応えてくれたのだから。

しかも、タイヤはワンメイク。SUPER GTではどうしても存在してしまうメーカーごとの序列がなくなったことで、ふだんは見られないバトルが繰り広げられることとなった。例えば土曜日のレース1では、坪井翔が駆るウェッズスポーツ バンドウと、山下健太のワコーズというレクサスLC同士の戦いが勃発。今、飛ぶ鳥を落とす勢いの山下に、坪井が抜きつ抜かれつ堂々渡り合うなど、大きな見せ場が山ほどあった。また、レース2で優勝したモデューロNSXのN.カーティケヤンも、ふだんGT500で唯一のタイヤを履くこのチームの戦いぶりからすると正直、伏兵と言わざるを得ないのだが、条件がイコールになればこういうことも起きるわけだ。

さらに、これもDTMルールである2台ずつが真横にぴたりと並んでスタートするインディ方式のローリングスタートも、火に油を注いだ。特にレース2では左右のマシンが触れ合わんばかりに、いやもうガツガツとぶつかりながらスタートしていく光景が繰り広げられ、しかもそれは後半になるほどエスカレートしていったのである。

こうした熱さを象徴していたのが、レース2で起きたホンダ3台、レクサス5台のマルチクラッシュ。ふだん、同メーカー内はチームという側面もあるし、そもそも耐久レースなら先を見越して危ない時には引いただろう。そもそもマシンやタイヤの差も、もっと大きかったはず。このクラッシュは、それらの条件が外れたからこそ起きたピュアな“ハコ”のレースとしての事態だったと言える。

結果として、レース1はKeePer TOM’S LC500のN.キャシディが優勝。ドイツでは雨に足をすくわれリタイアしていたから、まさにリベンジ完遂である。そしてレース2では前述のとおりカーティケヤンが優勝し、2位にはBMWのヴィットマン、3位には前日のレース1のフォーメーションラップでスピンリタイヤしていたL.デュバルが入り汚名返上を果たした。

観戦する側、取材する側としては文句なしに楽しめたSUPER GT×DTM 特別交流戦。コスト、スケジュール、運送面など、まだまだ大きな課題を抱えていることは間違いないが、冒頭にも書いた通り今後も絶対、継続してほしいイベントである。運送面で大変ならば日本とドイツの間のどこかでやる手もあるのかもしれないし、コストで言えば世界戦ということで超メジャーな冠スポンサーがつくような動きになればいい。スケジュールはできれば、もう少し暖かい時期がいいけれど……あるいは、せめて九州や沖縄でというのもアリなのかも?

とにかく久しぶりのスペクタクルなレースに、このクラス1レギュレーションの明るい未来を見た次第。次の機会には皆さん、見逃すことのないように!

〈文=島下泰久 写真=鈴木悦夫/トヨタ〉