軽ハイトワゴンのeKクロス、そして軽スーパーハイトワゴンに属するeKクロス スペース。2台は同じようにも見える顔つきをしている。でも、よく見ればけっこう違う。「東京モーターショーでマツコデラックスさんにも“こっちの顔のほうがまろやかでいい”と言われました(笑)」とは、三菱自動車 デザイン本部 プロダクトデザイン部 デザインプログラムマネージャーの大石聖二さん。なるほど、確かにeKクロスの顔つきのほうがよりアグレッシブで、eKクロス スペースのほうが穏やかにも見える。
軽自動車という限られたスペースのなかでの、ダイナミックシールド顔の表現。その点ではeKクロスのほうが難しかったと、大石さん。「じつは、より平面的…極端に言えばトラックのヘッドのような造形のほうが収めやすいんです。(eKクロス スペースが)eKクロスよりも落ち着いて見えるのは、それもあるかと思います」(大石)。
さらに違うのはライトの位置。まずeKクロスのヘッドライトは、斜めに切れ上がった部分ではなく、じつはその下の縦長の部分。これはデリカD:5と同じ配置で、ダイナミックシールド顔の”法則”だ。切れ上がった部分はスモールランプ。だがeKクロス スペースの場合は、斜めに切れ上がった部分がヘッドライトで、その下の縦長の部分は上からフォグランプ、スモールランプ、ウインカーという順番に並ぶ。
「当初、eKクロスのランプをそのままこっち(eKクロス スペース)に持ってくることも考えて設計検討までしました。でも、ボディの縦横比が違うからデザイン的なバランスがよくなくて。やっぱり新規で起こそうとなったのです。それからアダプティブLEDライトの採用も関係しています。現状、eKクロスのライトをアダプティブ化しようとすると少し幅が足りない。ポジションやターンランプと比べ、メインビームの開発費はケタ違いにかかりますから。専用で起こすのは難しい。両社(日産/三菱)で共有しなければならない都合もあり、デザインと実務的な観点で上へ配置することにしました」(大石)
アダプティブLEDライトとは、単純にハイ/ロービームを自動で切り替えるものより上級の装備。ハイビームのままだと前走車や対向車を幻惑してしまうが、前走者や対向車を検知して、その部分だけを遮光してまぶしくさせない、かつその周囲はハイビームで明るく照らすという機能。夜間での走行時にとても役に立つ。
軽自動車はサイズに制約があり、メカの搭載スペースが限られている。その難しさを克服した一例である。
〈文=driver@web編集部 写真=澤田和久〉
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