カローラレビン/スプリンタートレノは、カローラ鷲/スプリンター鷹という車名になりそうだった!?【車名の由来Vol.007】

日本語で、鷲と鷹

2代目カローラ/スプリンターのクーペ系にセリカの強心臓を積んだホットモデルがレビン/トレノ。そのアイデアはラリー好きで当時シャシー設計部にいた久保地理介氏だったという。セリカ用の1.6リットルDOHCエンジン「2T-G」をこのクルマに積めば、小さなボディに高出力の組み合わせで走りが楽しいクルマになると。

●全長3945mm、全幅1595mm✕全高1335mm、エンジンは1.6リットル直4DOHC(115ps/14,5kgm)を搭載。価格は81万3000円(レビン1600 4速MT)

車名の由来については、2006年当時開発責任者だった佐々木紫郎氏に聞いたインタビューを基に紹介したい(一部「トヨタをつくった技術者たち」により事実関係を補足している)。

●2代目(途中から)/3代目カローラの開発責任者を務めた佐々木紫郎氏。モータースポーツにも関心があり、若い技術者の提案からレビン/トレノが誕生

車両が完成するとカローラ/スプリンターの派生車種として、それぞれサブネームを付けることになった。サブネームだからという気安さも手伝って、当時社長だった豊田英二氏に決めてくださいと、取締役だった長谷川龍雄氏(初代カローラの開発責任者)を通じてお願いした。車名のエンブレムを造るためのリードタイムを考慮して、体育の日(1971年10月10日)までに急ぎで決めることも併せて伝えたという。その結果、長谷川氏は「おい、決めてくれたぞ、カローラ鷲/スプリンター鷹。日本語で鷲と鷹」。困った顔をすると、「今日までに決めろというから決めてもらったんだよ。嫌だったら自分で英二さんのところに文句を言ってきなさい」と。

●2代目カローラ/スプリンターのクーペボディをベースに、セリカ譲りの2T-G型エンジンを搭載。オーバーフェンダーで武装するなど、その鮮烈な性格をレビン/トレノの名前が主張する

それまで英二氏と直接話をする機会もなかったので、「どうしよう」と思って皆で相談して販売部門の営業担当に聞いたら「まだ日本の名前は早い、困る」ということになった。英二氏は英語やイタリア語などではなく、そろそろ日本の名前を付けたいという希望を持っていた。

トレノは雷、レビンは稲妻

日本名は早いといった理由では断れない…と議論になり、商標を調べてみると大阪の自転車店が「HAWKS ホークス タカ」という商標(第502926号・1953年5月23日登録)を保有していることがわかった(この商標は後年他社が取得している)。同じ乗り物のジャンルの商標のため、鷹という名前では他社の権利に抵触するというわけで、これを断る利用にしようということになった。

ついては代案が必要というわけで、皆でしばらく考えて、トレノ/レビンという名前を付けた。トレノはスペイン語で「雷」、「雷鳴」、レビンは古い英語の言葉で「稲妻」、「電光」を意味する。稲妻が走り、雷鳴がとどろくというパワフルで鮮烈な走りの性格を表現したネーミングである。

豊田英二氏がレビンとトレノを入れ替えた理由

当初、カローラトレノ/スプリンターレビンと書いて英二氏のところに行った。社長と話すのは初めてだった。鷲と鷹の名前が登録できない理由を説明すると、「そうか、残念だな。じゃあどうするんだ」と言われ、「皆で考えて、こういう案を考えたのですけれども」と紙に書いた代案を出した。英二氏は5分くらい考えて、やおら紙に書いて決めた。サブネームを逆にして、カローラトレノを「カローラレビン」、スプリンターは「スプリンタートレノ」とした。その理由はカローラのほうが先に生まれ、派生モデルとして誕生したスプリンターの兄貴分にあたる。兄貴は速いほうがいい。雷は音(雷鳴)より光(稲妻)が速いから、速いほうを兄貴にして、それでカローラレビン、スプリンタートレノになった。言葉が持つ意味合いを考慮した理詰めの判断によって、人気車の車名が生まれたのだ。

●「ハチロク」の愛称で今なお人気を集めるAE86型カローラレビン。5代目カローラ以降、クーペ系全車がレビンの名称を名乗り、スポーティイメージを強調

LEVINは1969年11月24日に申請済みの商標だったが、COROLLA LEVIN、SPRINTER TRUENOは1971年10月22日に特許庁に新規に申請をした。車名決定までのドラマは、2週間ほどの出来事だったようだ。

〈吉川雅幸著『車名博物館PART1』(八重洲出版)より〉