【現地詳報】米カリフォルニア州・コロナ禍、クルマ社会でのSTAY HOME【ケニー中嶋】

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界が大きく変動している。世界各地の都市が封鎖され、国外からの出入国も制限された。一人一人が衛生管理を行った上で、感染者・感染箇所を特定し隔離・遮断することで対応できる段階から、ウイルスの所在が特定できない段階となり、近隣の移動自粛を含むあらゆる社会生活を規制するロックダウンが始まった。

社会全体で人との接触を最小限にしてウイルスとの接触リスクを軽減するという対策は、これまでも局地的に行われたことはあるが、世界レベルでこの規模の社会閉鎖が行われるのはもちろん初めてだ。広域にまたがる人や物の移動が活発な現代、各地で感染が拡大しまた重篤化する事例が急増してくると、ワクチンや特効対処薬ができるまで、世界中の一人一人が心を一つにしてウイルスを生活から排除すること。そして感染拡大を抑えて、なんとか医療体制を整えて亡くなる方を増やさないことを目指そうということなのだと思う。

感染が拡大した北米は深刻な事態に

4月の段階で、アメリカでは感染者数が急増市世界最大となった。現在はピークを超えたものの、なかでもニューヨークは甚大かつ深刻な事態に陥った。

僕が住むカリフォルニア州は、全米でもいち早く、連邦政府の緊急事態宣言に先んじた3月19日に州知事がSTAY AT HOMEを発令した。同じ州内でもサンフランシスコ、シリコンバレーを擁する北部ではすでに感染拡大が確認されていたこともあって、その時点で先にアップルなどを中心に企業レベルでのリモートワークや、郡レベルでの外出規制が始まっていた。南部でも都市部のLA郡が州の発令と同日に規制がしかれ、僕がいるオレンジ郡はで1月の時点で中国からの旅行者の感染2例が報告されていたものの、その後市中感染がほとんど広がっていなかったこともあって、オーダーの翌日にやや緩やかな規制が発令されるなど、詳細は郡・市レベルでそれぞれの状況に即してという形が取られた。

規制の概要は、日本のそれとほぼ同じで、社会活動に不可欠な医療、食品、日用品などを除き、小売業やサービス施設などは臨時休業。映画館などの施設はクローズとなり、レストランやバーでの店内での飲食はできなくなった。美容室やネイルサロンなども休業となった。学校は休校となり、官公庁・企業は企業も在宅勤務体制となり、そのまま仕事を失った人も少なくない。公園やビーチなどもまずは駐車場が閉鎖され、のちに立ち入りが禁じられた。そして、ほぼ全てのイベントは中止、もしくは延期となった。

僕自身が予定したものだけで、3月のジュネーブショーが取り消しとなり、4月のニューヨークショーは8月末に延期。4月のロングビーチGPは中止され、5月のインディ500は8月末に延期になり、先に6月に日程移動していたデトロイトショーも中止が決まるなど、移動外出自粛要請を前に7月までの移動を伴うスケジュールは全て白紙になった。家のリビングで、施設のひっ迫で訪れる予定だったイベント会場に緊急医療施設としてベッド運びこまれる様子が映し出されるTVを眺めていて、直面している現実の厳しさ、恐ろしさを突きつけられた気持ちになった。

経済政策が急務に

医療対策と同時に経済対策も急務になっていた。個人の貯蓄額が日本の感覚だと驚いてしまうほど少ない米国では、社会生活が止まったことによる影響は直ちに大きく響いてくる。米国の4月の失業者率は14.7%と戦後最大を記録。たちまち生活が立ちゆかなくなる人があふれた。

連邦政府、地方自治体などは医療体制支援とともに企業、個人への大型の緊急支援策を打ち出したが、消費・雇用双方が急速に冷え込んだことで、小売・サービス、運輸・旅行業など多くの事業が存続の危機に瀕している。

自動車業界も大打撃

自動車も大きな打撃を受けた業種の一つだ。既存の生産ラインを国家非常予算の枠内で緊急医療用品などに切り替えるなどの措置を取っているものの、非常事態宣言下、4月の全米の新車販売台数はほとんどのメーカーが前年同月の50%を下回った。移動制限が設けられたこともあってレンタカーの稼働率も史上最低で、レンタカー大手であり、自動車メーカーにとっても最大のフリートの一つであるハーツが連邦破産法の準備に入るという深刻な事態に陥っている。

閑散とするフリーウェイ

大きな社会変動のなかで日常生活も大きく様変わりした。朝夕の通勤ラッシュがなくなり、ついこの前まで片側5車線に車がひしめいていたフリーウェイはどこもガラガラ。

生活習慣の変化により、この短い期間に地球環境が大きく改善されたことも話題になっている。オゾンホールがほほ完全に修復されたとの報告もある。空は青く、空気は澄み渡り、広く道路が彼方まで続く景色は、見慣れたものなのに全く違う場所のような印象だ。渋滞のストレスは皆無だし、ガソリン代は年初に比べるとガロン当たり1ドル以上値下がりしている。こんな情勢でなければ、これほど気持ちよくドライブを楽しめる環境はないと思ってしまうほどだ。

案の定といってはいけないが、CHP(カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール)のレポートによると3月19日からの1カ月間、時速100マイルを超えるスピード違反は前年比で実に87%増。2493件の違反切符を切ったらしい。

とはいえ、社会全体ではクルマに乗る機会も走行距離も激減し、事故の発生件数も減っている。保険会社によっては、社会活動制限に伴う救済措置の側面もあって自動車の保険割引などの措置をとるところも出てきた。筆者が加入しているステートファーム社からは、保険料の25%を顧客に還元(掛け金の割引)するとの連絡があった。

さまざまな規制が緩和されつつある現状

当初、規制の一つの目処とされていた5月に入り、依然感染は終息していないながらも、重篤な罹患者が減少したこと、また規制による社会的影響もあり、各地でそれそれの状況に即したかたちで段階的な規制緩和の道筋が模索されている。それぞれが自粛の中で身に付けた公衆衛生に即した生活習慣を継続することで、社会生活との折り合いをつけつつ経済を再開するフェーズに入ろうとしている。

カリフォルニア北部・シリコンバレーでは、通勤による移動を減らすことでこんなにも環境改善が進むのであればと、規制解除となった以後も可能な限り規制下で取ったリモートワーク体制を継続する計画が発表された。

新たな生活様式への取り組み

多くの小売店もしばらくの間は以前の体制での営業はできなそうだし、レストランもテイクアウトのみの対応が続きそうだ。そんな厳しい中にあって、自ら対策、工夫をとり始める動きがある。アマゾンなど既存の通販ビジネスに加えて、ローカル限定でのデリバリーシステムや自社でのデリバリーシステムの構築を進める企業も急増した。小売店やレストランなどでは来店前に電話やWEBのホームページ、あるいは専用アプリを経由してテイクアウトのオーダーをしたり、商品を選び、支払いまでを済ませて、店舗に入ることなく、対面非接触での商品を渡したりといったサービスも珍しくなくなってきた。医療施設などの駐車場でのドライブスルー感染検査や、オンライン診断、薬の処方から宅配などの仕組みも同じくだ。

この先、ウイルスが鎮圧され規制が完全に解除されても、今まで当たり前だと思っていた日常がそのままの形で戻ってくることはないかもしれない。

僕自身の生活も激変した。これまでは1年の半分はどこかの旅の空の下で過ごす生活で、今年も1月~2月の2カ月で地球を一周していたのだが、3月からの2カ月の移動距離はわずか数十マイルだ。もちろん変化への戸惑いも先が見通せない不安はある。でも、実のところ規制下での毎日の暮らしは当初想像していたほどには不自由ではない。忙しさを言い訳に放置していたあれこれにじっくり向かいあう時間もできた。猫たちとのんびり遊んだり、時には料理に挑戦したり、趣味である旧車のレストアをすすめたりして、何もしない時間を楽しむゆとりもできた。近い将来のためにと計画し、徐々にシフトしていた生活が一気に現実化してしまったというところもある。

ウイルスは、突然、これまでの社会の仕組みとリセットした。亡くなられた方も多く、失ったものはあまりにも大きい。でも、この苦難は必ず乗り越えられるはずだ。

これまでとは違うかもしれないが、その先の世界にも希望の光があるはずだ。明日に向かうために自分は何をしたらいいのだろう?何ができるだろう?今しばらく、巣ごもりをしながら、じっくりと目を凝らして眺めていこうと思っているのだ。

〈文&写真=ケニー中嶋〉