新型アコードは輸入車だった…日本導入が遅れた理由、日本独自の装備とは

2020年2月20日、アコードが日本でフルモデルチェンジした。コロナ禍による緊急事態宣言下では発表会も試乗会もできず、新型に代替わりしたことに気がついていない人もいるのでは? しかも、北米では17年秋にモデルチェンジ。宣言が解除された6月、あらためて試乗会が開催された。ホンダの屋台骨であるアコードは、日本で存在感を発揮できるのか? ちなみに、新型アコードは10代目である。

なぜ日本導入に2年以上かかった?

歴代アコードは、「走り」と「人のための空間」が不変のテーマ。かつ、各世代がそれぞれの時代に合うように姿を変えて、新しい価値を提供しているという。コロナ禍でパーソナルモビリティの価値が見直されている昨今、「時代に合う価値を提供」とは、なんともピッタリだったように思える。しかし、この10代目アコードはすでに2年半も前に北米に投入されている。北米先行で日本には後から投入されるという図式は先代も同じだった。そして、ホンダの屋台骨であることも変わりない。

ホンダの関係者に聞くと2つの要因があるという。

「ひとつは生産工場のスケジュール。アコードは世界中で売られています。先頭だった北米仕様は、北米のオハイオ工場で造っています。日本仕様はタイ工場での生産が決まっていました。そうなると、タイでの販売開始より、日本は後になってしまう」

これまで日本のアコードは、埼玉県の狭山工場で造られていた。しかし、財務体制の改善が迫られるなか、設備の老朽化した狭山工場は2021年度までに乗用車生産の終了が決まっている。そこで、新型アコードの生産地に指定されたのがタイのアユタヤ工場だ。ホンダの規模では世界で同時に新型車の生産体制を立ち上げるのは難しい。北米、中国に続いて、タイ・アユタヤと、生産体制を整えるのに時間がかかったというのが、理由のひとつだ。

もうひとつは、日本仕様オリジナル装備や品質の熟成だ。

アコードは、地域によって微妙に装備や仕様が異なる。日本仕様はドライブモードがノーマル、スポーツ、コンフォートの3つ。このコンフォートは、日本オリジナルのモードだ。日本のユーザーは、快適な乗り心地を求める人が多いということか。

さらに、世界での販売台数も関係しているはずだ。アコードの主戦場である北米では2019年に約26万台、中国でも20万台以上が売られている。それに対し、日本の販売計画はなんと300台。けた違いに少ない。これは後回しにされても仕方がない…。日本では存在感が薄くなってしまったが、北米では売れているクルマの11位にランクインしているのだ。

高級車らしいスムーズな走り

新型アコードのパワーユニットは先代同様ハイブリッドのみで、グレードもEXの1グレード。ホンダは2モーターハイブリッドの名称を「スポーツハイブリッドi-MMD」から「e:HEV」に改めている。

試乗車をスタートさせると、EVのままで加速していき、アクセルを大きく踏み込むと、やっとエンジンが始動する。低〜中速度域では、バッテリーの電力が十分ならエンジンオフ、足りなくなればエンジンが発電機として機能して、駆動はモーターのみ。そのため加速感は極めてスムーズだ。エンジンが始動してからアクセルを深く踏み込むと回転は少し高まるが、排気音を含めて室内にはほとんどノイズが届かないため、高級車に乗っている実感が高まる。

新型はエンジン音だけでなくロードノイズが小さいのが特徴。運転席ではほとんどノイズが気にならない。シートサイズは背もたれの高さが90mmアップしており、ゆったりしたドライビングポジションで快適性が高い。こうしたサイズを体感すると、やはり北米に焦点を当てたモデルであることも実感する。

フロントマスクなどのデザインは、最近のホンダ車に共通するデザイン。実車を見ると、先に登場したインサイトに似ている。アコードもインサイトも同じクーペフォルムのセダンだが、プラットフォームには共通性がない。インサイトはシビック系だが、アコードは1クラス上の新規プラットフォームだ。ホイールベースは先代から55mmも伸ばされ、そのほとんどを後席足元の拡大(50mm)に使っている。

しかし、後席での快適性は微妙だ。後席のそのもののスペースはもちろんとても広く、足を組んでも前席に当たらないくらい余裕がある。しかし、ノイズという点では前席に劣る。じつは新型もアクティブノイズコントロールを採用していて、室内マイクを従来の2本から3本に増設。追加マイクは運転席と助手席の間の耳の近くに配置している。このことからも、運転席でのノイズを取り去ることに注力しているのが予想できる。日本ではこのサイズのセダンになると、後席の快適性も重視されるが、彼の地ではあまり重要視されないのかもしれない。

世界で売れてる理由がわかる!

乗り心地は一般道から高速道路までフラット。18インチタイヤをしっかりと履きこなしているという感じだ。新型はドライブモードに合わせてダンパーの減衰力を4輪独立制御するアダプティブダンパーシステムを装備している。意外だがアコードとして初採用だという。スポーツ/ノーマル/コンフォートの3つのドライブモードは日本専用で、北米仕様はスポーツとノーマルの2モードのみ。

減衰力はモードごとに可変領域を変えると同時に、車輪速信号の変化、前後左右の加速度、ステアリングホイールの舵角などから、車両の状態やドライバーの操作をセンシング。500分の1秒単位で減衰力をリアルタイムに連続変化する。

実際にコンフォートモードで高速を走ると、ジョイントを通過しても突き上げ感はまったくなく上質な乗り心地を実現している。スポーツを選ぶと明らかにサスペンションが引き締められ、フィーリングはダイレクト感が増す。しかし、乗り心地が粗くなるようなことがない。このあたりは、剛性が強化されたボディによる効果も大きい。

実際に乗ってみれば、確かに世界で売れることにも納得できる出来栄えだ。タイ生産だからと品質面を心配する声もあるが、それはまったくの懸念である。質感はじつに高い。

インサイトと悩むかも…

節目となる10代目は、高級車らしい快適性と乗り心地を実現しているが、北米より2年遅れての日本投入はやっぱり残念。ホンダセンシングはもちろん標準採用しているが、レーンキープが65km/h以上でしか作動しない。現在の高級車の基準から見ても、車両価格が465万円することを考えても、もっと低速域からアシストしてほしいし、改良する時間的余裕もあったはずだ。

セダンというくくりで見ると、身内に賢いインサイトも存在する。こちらは1.5Lのe:HEVだが、最上級のEXブラックスタイルを選んでも約373万円。アコードとインサイトのキャラクターが近く、どちらを選ぶか大いに迷うことになりそうだ。

〈文=丸山 誠 写真=岡 拓〉