ミッドシップ+4WD+ハイキャス! 市販化直前と言われたコンセプトカー「日産MID4」は走るとどうだったのか?

●上の写真は1985年第26回東京モーターショーに出展されたときのもので、紹介パネルには「ミッドシップフルタイム4WD──NISSAN MID4」の文字とともに、具体的なスペックが書かれていた。

市販化目前と言われながら、幻に消えた和製スーパーカーがあった。1985年、日産が第26回東京モーターショーに出展したミッドシップレイアウトの4WDスポーツマシン「MID4」である。コンセプトカーでありながら完成度は高く、実際に走行も可能だった。
プロジェクトを担当したのは長年スカイラインの開発を務めた「ミスタースカイライン」こと桜井眞一郎氏。コンセプトは「誰もが乗りやすく、速いクルマ」というもので、桜井氏によれば『MID4に乗れば、総入れ歯のおばあさんでも長谷見昌宏選手や星野一義選手と互角に走れる』、そんなクルマを目指したという。
それは4WDならではの安定志向を意味するのか? しかし、ミッドシップにしたということはシャープなハンドリングも有していたはず……。実際にMID4の試乗テストを行ったドライバー誌1985年11月20日号のレポートからその実態に迫る。


エンジンはツインカム3リッターV6、可変バルブタイミングシステムも採用

●リヤのエンジンフードを開けたところ。3000ccのV6エンジンを横置きにし、ミッドシップにマウント。

スペックを見ただけである程度その走りが想像できたり、そうでないまでも、今までのいずれかのパターンに当てはまる走りが多いなかにあって、MID4に対する興味は尽きない。ミッドシップ&フルタイム4WDとはいかなる走りを見せるのであろうか。MID4は全く未知の体験をさせてくれるはずだ。

身体をかがめながらコクピットに身をおさめる。ドライビングポジションは思ったほど低くない。閉鎖感も少なかった。市販を前提にしているとは言っても、このMID4はあくまで手造りに近い試作車だ。シートなどにもそうした雰囲気が感じられる。だが逆に言えば、革を手縫いにしたサイドサポートはかえってフェラーリのような少数生産スポーツカーの味が出ていて好感が持てる。

一瞬のクランキングでエンジンはうなりを上げた。そして次の瞬間には1000回転を定位置に決めアイドリングを始めている。不快なノイズや振動のたぐいは一切感じられず、すでに完成車のふるまいだ。軽くアクセルをあおる。無負荷とはいえ、エンジンのピックアップは驚くほど鋭い。3ℓというキャパシティから想像される重々しさがないのだ。1.6ℓクラスのツインカム並みといっていい。しっかりと節度感がありストロークも詰められたシフトレバーを1速に入れ、静かにクラッチを繋いでコースインした。

●シンプルながら、スポーツカーらしい運転席まわり。ドライビングポジションは低すぎることはなく、クルマの見た目から思うほど窮屈さはない。
●メーターまわりもシンプルな二眼式。タコメーターのレッドゾーンは7000回転から。速度計は280㎞/hまで目盛りが刻まれている。

MID4が搭載するエンジンはVG30E型をベースに、4バルブ・ツインカム化したVG30DE型のV6。VG系V6エンジンが発表された際、そのコンパクトさを生かしてFF車やミッドシップ車に用いられる可能性があると言われていた。それが実現されたばかりか、MID4にあってはより高度なメカニズムまでも盛り込まれている。
最高出力230馬力/6000回転、最大トルク28.5㎏m/4000回転というスペックは国産最強クラス。トルクもVG30ET型の34㎏mに次ぐレベルに達している。基本的にシリンダーブロックはVG30E型と共通だが、パワーアップにともないリブの追加などでそれに耐える剛性を確保。シリンダーヘッドのマウントも変更したそうだ。

MID4のエンジンには日産の最新技術を全て盛り込んであるといい、スカイライン(*)用のRB20DE型に採用され直動式のハイドロリックバルブリフターや、電子配電点火システム(NDIS)、電子制御式吸排気コントロールシステム(NICS)などが備えられている。NICSに関しては各バンクごとにスロットルボディを持つツインスロットルタイプとし、各々に直結したサージタンク間のバルブを開閉することで可変吸気を行う。低回転域のトルク特性と高回転域の出力特性を向上させるメカニズムだ。かつてのツインキャブのようなイメージを狙ったとのことだ。
さらに吸気側のカムシャフトとカムプーリーのずれ角を制御してバルブタイミングを7度可変する新機軸も投入。バリアブル・タイミング・カム(VTC)と日産が呼ぶ、NICSと似た効果が期待できるシステムである。

*当時販売されたいた7代目R31スカイラインのこと。

ストレートをフル加速。2速、4000回転から強烈な立ち上がり。エンジンはアクセルワークに対し、リアルタイムに反応する。ドライバーとメカニズムの呼吸が完璧に一致するさまは、自然吸気式のツインカムエンジンならではの魅力だ。
パワーの盛り上がりは一気呵成。瞬く間に頂点を極める感覚が得られる。2速を使い切って、3速にシフトアップ。市販時には変更される可能性があるというが、現段階では各ギヤがクロスした感じは薄い。ところが、加速感は一向に衰えを見せないのだ。マキシマムは7000回転。230馬力を6000回転で発揮するが、6800回転あたりまではパワーの頭打ちがない。しかも、その先で極端に落ち込むわけではないため、マキシマムまで気持ちよく引っ張れる。

市販時にはファイナルレシオもローギヤード化される予定だという。トルクが全域にわたってフラットなので、さらに鋭い加速感が楽しめるようになるはず。メーカーのテストでは240㎞/hオーバーをマークしたそうだ。
背中の直後から腹に響く「グォーン」というエキゾーストノートが聞こえてくる。刺激的ではあっても、中身が無さそうな軽薄サウンドとはワケが違う。左右のバンクからのエキゾーストマニホールドをステンレス製のエキゾーストパイプでひとつにまとめ、力のこもったV6ミュージックが奏でられているのだ。

●ミッドシップマシンらしく、ドアの直後にはエンジンルームへ効果的に空気を取り入れるエアスクープが。
●精悍なイメージを与えるテールランプ上のスリット。エンジンルームのエア抜きに貢献するとともに、デザイン的なアクセントにもなっている。
●リヤアンダースポイラーから覗くマフラーはデュアルタイプ。気持ちのいいV6サウンドを存分に奏でてくれる。

>>4WDに後輪操舵「ハイキャス」も組み合わせた走りとは